稽古場日誌

methods&過妄女 大久保 美智子 2019/06/03

苦手分野

私は恋愛障害者です。あ、こういう言い方はいけない? 淳子さんも書いていましたがメンへラっていうんですか? 淳子さんとは真逆の方向で、全くもって恋愛はダメです。

今回のお題は「恋」。苦手分野ですが、せっかくなので「なぜ恋愛をこじらせてしまうのか?」について考えてみよう。

そもそも我が母は、私を女として育てる気があったのか、疑問だ。お洋服はいつも紺やグレー。赤やピンクを着させてもらった思い出はない。今でもピンクのTシャツを着る時は若干ドキドキする。スカートにしても同様。いつもズボンであった。

私が癖っ毛だったこともあろうが、髪の毛を梳いてもらったり、可愛く結ってもらったこともない。

小学校も高学年ともなれば多少男性への意識が芽生えるものだろうが、私は全くなかった。ほぼ野性の猿だった。
しかし仲間外れにされるのが嫌で、無理矢理「好きな男子」を作っていた。アイドルにしてもそうだった。本当に好きなのではなく、比較的好ましい男性を無理矢理好きになるよう努める、という感じだった。

また、女子なら誰でも記憶にあるだろうが、ブラジャーを着けるタイミング、というややこしいものがある。
私は割と乳の発育が良かったのだが、母は全く気にかけてくれなかった。同級生は次々と初ブラジャーを着けている。聞くと「お母さんが察して買ってきてくれた」。自分のお小遣いではブラジャーを買うには足りず、意を決して母に「ブラジャーが欲しい」と言ってみた。大変恥ずかしかった。しかし、あろうことか、母はそれを無視した。明確な返答をしなかった。そこにどんな意図があったのかは分からない。しかし私はなんとなく「女」に対して罪悪感を感じ取ってしまった。

大人になってからもなかなか恋愛がうまく行かなくて「何でかなぁ〜」と思っていたが、恐らく、コレが根本にある。女になることが恐ろしいのだ。女になったら捨てられる感じがするのだ。

ようやくこの歳になってこんなことが分かってきた。そして改めて「女」に興味が湧いている。いやもう本当に遅すぎるんだけれども。「女でいたからって誰も責めないよ、むしろ大事にしてくれると思うよ」と今、自分に声掛けしている最中です。

大久保美智子

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

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