稽古場日誌
八田部 鉄(やたべ てつ)。66歳。埼玉の県立高校で教師として22歳~65歳まで勤める。
担当は、英語及び仏語。
山の手事情社に入った
のは、演技がうまくなりたかったから。ここ10年くらいか、演劇を時々やってきて多少は経験もしたが、なかなか自分の表現に満足できない、しっくりこない感じがあった。演劇をちゃんとした所でちゃんと勉強もしていないから、しごく当たり前である。これは、やっぱり基本からしっかり学び直さなくては、このままで終わってしまう、今のままでは、遅々と少しは演技も向上していくかもしれないが、あまり大きな飛躍は望めそうもないなと考え、演劇を学べるところへ行こうと決めた次第である。
では、なぜ山の手事情社なのか? 大学や専門学校は、共に学ぶ人たちの年代が20歳前後と幅が狭いし、講師は演出家、あるいは劇団から来ているらしい。それなら、直接、劇団に行って勉強した方がよさそうだと考えた。外部の人を対象に研修を行っている劇団もいくつかあったが、参加者に年齢制限があったり、また、真剣度に疑問があったりもして、通える範囲で確実に勉強できそうなところは、やはり山の手事情社か ということとなったのである。
ただ正直なところ、山の手事情社は、避けたいという気持ちもあった。それは、身体的鍛錬をとても求められるだろう、プロレス興行団体に入る覚悟が必要か? ということもあったが、それ以上に、内部に入るということは、今までこの20年くらい築いてきた保ってきたお互いの関係がおかしくなってしまう、壊れてしまうかもしれないというリスクを取ることになると思ったからだ。
今までは、観る側と観られる側、プラス、一般の人を対象にした時折のワークショップでの学ぶ側と教える側の関係だった。それが、一歩踏み込んだ関係になってしまう。双方どちらにとっても、居心地のよい生ぬるい? 関係ではなく真剣の関係になってしまう。いやだな、この選択肢は。取りたくないな。しかし、このリスクを取らぬのならば、どこでどう演劇を勉強すればよいのだ? うむ……no other idea! ええ、ままよ! なるようになれ!
Can’t be helped! どのみち、生き死にには関係ない。じゃ、結局、大したことないじゃないか。なるほど、なるほど……
良好な関係を壊さないためには、双方が理解し留意しておかなくてはならないことがあると思う。
Ⅰ 稽古は真剣な学びの場である。
Ⅱ 人として尊重し合う。上下の関係はない。教える側と教わる側の立場の違いがあるだけである。
Fair play の気持ちを忘れない、持ち続ける。
ということだろうか?
すでに始まっているこの稽古が実りあるものであることを願っている。劇団メンバーと信頼し合い良い関係を築いて行けたらと願っている。
I am standing now with open arms.
Croyez-moi, mes bras sont ouverts pour tout le monde!
八田部 鉄 YATABE Tetsu