稽古場日誌

ニュージェネレーション 鍵山 大和 2021/12/08

逃げ場がない

僕には理想の自分がいます。苦手な事にも涼しい顔で取り組み、ここぞという場面で集中力を発揮して勇気あるアクションを起こし、チャーミングでファンタスティックな自分。
しかしそんな自分は稽古場のどこをみても見当たりません。いるのは僕の頭の中だけです。

山の手事情社では、《山の手メソッド》という独自に開発・アレンジした様々な稽古を行っており、その中に《ショート・ストーリーズ》という稽古があります。シチュエーションと関係性を決めて短時間で5分ほどの劇を作り演じるという稽古です。その中で、好きな子と飲み会で再会し僕が告白するという場面がありました。本来であればサラッと男前に告白する予定だったのですが、いざ告白する場面になったら自意識が邪魔をしてとても気持ちの悪い告白をしてしまいました。稽古場ではよく「遠慮するな」「もっと暴走しろ」といった言葉が投げかけられますが、このように自分が何かアクションを起こさないといけない場面でビビッて躊躇してしまうことが多々あります。それは見ている人にとって、何より自分にとって面白くありません。

稽古の後はいつも反省タイムです。「ああすればよかった」「もっと面白くできた」「悔しいな」そんな言葉が寝る直前までぐるぐる頭をよぎります。最近では寝ても後悔は収まらず、夢の中でも稽古をしています。寝言では「うるせえ、コ〇すぞ!」といった暴言や「もうできましぇん!」といった弱音を吐き、自分の叫び声に驚いて目を覚まします。

もう逃げ場はどこにもありません。だからこそ少しでも理想の自分に近づくために今の自分と向き合っていきたいです。あー怖い。楽しんで尚且つ勇気をもって。

鍵山大和

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