稽古場日誌

ニュージェネレーション 酒井 千秋 2021/12/23

わがままになりたい

承認欲求の強い私は、ありのままの自分を認めてほしいのだと思っていた。
でも最近、ふと気がついた。
むしろ私は、自分が自分じゃない者としていることが許される場所を、ずっと求めているのではないか。
海外に留学して英語をしゃべったり、塾の講師として教壇に立ったり、そういうことが好きなのも、普段の酒井千秋とできるだけ切り離した世界で生きたかったからだ。

実らない恋ばかりしている。友達は多い方だと思っているけれど、どこまで相手に心を開いているのだろうか。周りのみんなは上手くやれているのに、自分ひとり取り残されていくような気がする。私には何か決定的に足りないものがあるのではないか、ことあるごとにそんな劣等感に悩まされてきた。
そんなつまらない自分に縛られず、自由になれる場所。それを求めて私は演劇までたどり着いたのだ。

それなのに、山の手事情社の稽古では、自分自身をとことん深く掘り下げなければならない。
理屈はわかる。自分から離れるためには、自分を知らなくてはいけない。うん。納得はしている。わかっていてここに来た、はずなのだが……。
私は自分自身のことが嫌いなのだと、改めて気づかされてしまった。
嫌いな自分をこんなに見たくなかった。こんな自分誰にも見せたくなかった。
自分自身から遠ざかりたくてたまらなくなる。
そして、また気づく。
私は自分の感情をあまりにおざなりにしていた。
人に嫌われるのが怖くて、思っていることがあるのに無視して、自分を無理やり納得させて、いつも自分から逃げてきた。
後悔はしていない。そう思いたかった。
でも、逃げた先には、なんにもなかった。

その時その時の自分から逃げないで、自分の気持ちをちゃんと聞いてあげる。そして感じたままに行動してみる。私が一番しなくちゃいけないのは、わがままになることだったんだ。

自分の人生、好きに生きるって決めたから。
最後まであきらめず、わがままに。

酒井千秋

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