稽古場日誌

ニュージェネレーション 磯野 晴菜 2021/12/29

一生懸命やります寿司

「とにかく一生懸命やります!」
私が今までどこの現場でも言ってきた言葉です。
すいません、大嘘をついてしまっていました!
私は一生懸命やる“ふり”をやってきただけでした!
山の手事情社の稽古には《ものまね》があります。《ものまね》といってもテレビでみるようなモノマネ芸ではなく、自分の身近な人やこの人印象的だったなと思った人を真似ることで別の人間に化ける稽古です。
これが1年間に数回、個人発表する機会があります。これは劇団員の方々もみにきます。毎度毎度、吐きそうなくらいの緊張とプレッシャーを味わいます。
私は11月、もう思い出したくもないくらいにスベりました。
なにひとつうまくいかなかった。なんでだ! あんなに稽古したのになんで受けないんだ! 頑張ったのに!
ダメ出しでは
「一瞬、化けたと思ったのだけど、騙された。なにひとつ化けてなかったよ」とズバッと言われてしまいました。
しかし、気づいたのです。
《ものまね》はひたすら自分ひとりで稽古をしていきます。
私は自分で稽古したことに満足をしていたこと、台本を書いて何度もやって台本を覚えて、ちょっと言い方や間を変えて、これだけ何度もやっていれば面白いだろう。一生懸命やったよ、私よ!
……いや、そうではなかったのだ。自分のネタをこれでもかというくらい試行錯誤してやりこんで「化ける」という大事なことをしていなかった。
私の一生懸命はとにかく浅くて、そこで満足していただけだったのです。
それなのに自分は一生懸命やってるから大丈夫と言い聞かせて、自分で自分を騙し続けていたのです。恐ろしい事実です。

ダメ出しには他にも
「イニシアティブをとりすぎ」「人とちゃんと正対していない」「テンションの上げ方が普段の晴菜と一緒」「安いんだよ、とにかく」
もうやめてくれ! と叫びたくなります。
今、稽古で、どうしたらそうならないやり方で面白くなるのだろうとひたすら悩み、試し、空回りしまくっています。一生懸命やるだけではなにも進まない。もっと早く気づくべきだったと焦っています。
なにひとつうまくいかない、悪循環です。

回転寿司だと全ネタ98円の激安、しかし鮮度が悪い、種類も少ない、なにより美味しくない状況です。こんなんじゃ誰も私の寿司を手に取りません。
ネタの鮮度を良くして、種類も増やしてお客様が納得するお値段で手にとってもらわなければ、そして美味しいと思ってもらわなければなりません。
どんどん稽古にいく足取りが重くなっていってます。少し前までは同期と楽しく話しながら帰っていましたが、今では1人で今日の反省をずっと頭の中でぐるぐる考えながら帰っています。
とにかく、自分はまだまだ伸びるんだと信じて今日も明日も稽古にいくのです。

磯野晴菜

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