稽古場日誌

つい先日、高校時代の友人から「恋人が出来た」という報告を受けました。LINEの文面を見た瞬間、声にならない声が出て、飛び上がり、ベッドにダイブ、布団を力いっぱい叩きました。素敵な友人なのでとても嬉しくて、でもちょっと寂しくて、そんな複雑で大きな感情がぶわっと押し寄せてきました。
そして、「私、こんな反応するんだ……」と思いました。

舞台の上にもこういう人間のリアルな反応とかをのせたいなあと思うのに全然上手くいきません。劇団員の方いわく、「舞台上でも自分を守ってる」「傷つかないようにしている」から、だそうです。私もそう思います。役としても傷つきたくないと思ってるし、草野明華としても常に怪我しない場所にいようとしてしまいます。だから、結果的に小さくて面白くない表現しか出来ないんだろうなあ、と思います。「守ってるくらいなら舞台に立つなよ!」とこの前言われてしまいました。その通りだなあ、と思って、その通りだと思ってしまう自分のつまらなさに絶望しました。

このままだったら、舞台の上の私よりも部屋で独り言をぶつぶつ言ってる私や演劇サークルの同期に嫉妬して上手く話せなくなってしまう私、の方がずっと演劇的で魅力的な気がします。演劇とか全然向いてない。そもそも目立つこと苦手だし。

でも、そうやって弱音が顔を出すとすかさず心の中の安西先生が「諦めたらそこで試合終了ですよ」とやってくるので、頭の中は常にうるさいです。で、安西先生の論理としては「まだ本気出してないだけ」。
私はまだやれる、と思いたい自分、気持ちわるい。ていうか、そろそろ死ぬ気で頑張れ私!?
結局、演劇はやりたいんです。でもひたすら怖くて、飛び込めないまま2月を迎えてしまいました。

「変わりたい」と思って山の手事情社に飛び込んだはずなのに、どちらかというと変われてない。生まれてはじめて「面白い人間になりたい」と思って、でも「面白い」って想像以上に難しくて、他人と比べては自分のことが嫌になる。

それでも、まずはそのカッコ悪い私を受け入れることが大切なのだろうと思います。5月に抱いた理想の自分のようには変われてないけど、自分のことはこれまでよりもよく分かるようになりました。
2月、ここで本気出せないなら多分この先も「カワリタイ」って口だけ人間になってしまうと思います。だから、まず腹から声を出して、自分に与えられたことを全力でやってエネルギーを受け取ってもらえるように頑張ります。

草野明華

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『ほんのりレモン風味』omote

ニュージェネレーション公演『ほんのりレモン風味』
日程:2022年2月23日(水・祝)~27日(日)
会場:大森山王FOREST

詳細は こちら をご覧ください。

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