稽古場日誌

ワークショップ外部活動 安部 みはる 2022/09/02

岡山ワークショップ リポート

私たちは毎年岡山県にお邪魔し、小学生と一緒に演劇体験をしています。
文化庁芸術家派遣事業の一環で、芸術鑑賞教室を実施しているのです。
東京から遠く離れた岡山県の小学生に演劇を届けられることはとてもうれしいことです。

今回は、吉備中央町立吉備高原小学校、吉備中央町立大和小学校、玉野市立鉾立小学校の3校にお邪魔しました。
内容は、俳優の普段行なっている訓練の鑑賞と体験、オスカー・ワイルド作『しあわせな王子さま』のお芝居の上演です。
山の手事情社は、8月19日・20日に大田区民プラザ大ホールで『こくごのじかん』という公演を行いました。ご覧になった方はイメージがつきやすいのではないでしょうか。

この芸術鑑賞教室でやろうとしていることは、お芝居の内容がわかることではなく、自分の体を動かし、声を出すことの楽しさを伝えることです。
お芝居の世界に、体ごと飛び込んでいく鑑賞体験です。

お芝居を鑑賞する前に、体を叩いたり、左右非対称の動きをしてウォーミングアップし、お芝居ができる前段階の俳優の訓練を見たり、自分もやってみることで物語の世界にぐーんと近づくことができるのです。

見ているだけなら簡単そうに見えた「スローモーション歩行」も、やってみたらとても難しくて、右手と右足が一緒に出てしまったりします。
「怒っているけどだらしない歩行」(いろんなお題で歩いてみる訓練)も、友達の前でやるのは恥ずかしくて思うようにできません。
「スローモーション」で喧嘩をするデモンストレーションをした後の休憩時間には、あちらこちらにスローモーションの戦いが巻き起こります。やってみたくなりますよね。
この、やってみたくなっちゃうというのがとっても大事なことなのです。
自分で体験したことは今後の人生の大きな糧となるはずです。

『しあわせな王子さま』の上演中、つばめが死んでしまう場面ではいつも子どもたちの心が動いているのを舞台上で感じ取ることができます。
静かにしなさい、と怒らなくても大人が本気で取り組んでいると、ちゃんと集中して見てくれるのです。

鑑賞教室終了後、女の子が駆け寄ってきて、「あなたはロボットですか?」と聞かれました。「スローモーション」の動きを見てそう思ったのでしょうか。
その想像力の豊かさに舌を巻き、舞台と観客の一体感を感じて東京に戻りました。

今後も末長く、岡山にお邪魔できることを願っています。

安部みはる

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