稽古場日誌

馬込文士村 空想演劇祭 小笠原くみこ 2022/12/06

恋愛に疲れている皆さまへ

「不具者が、同じような不具者を見つけたときのような、ある親しみを感じました。」

これは、今年の「馬込文士村 空想演劇祭」で山の手事情社の作品『千代と青児』の中のセリフです。
馬込文士村の中心人物だった作家・宇野千代の作品をベースにして、宇野千代自身が主人公であり、画家の東郷青児とお付き合いに至る話です。
ゴシップネタ的には、アーティスト同士のカップル誕生! というような人も羨む二人に見えなくもない……。
人間だれしも、或る程度の年齢になれば傷の1つや2つあって当然ですが、この二人は、生傷のまま出会い、正直なところ羨むようなカップルではないのです。

上のセリフを語るのは、宇野千代自身です。
「不具者が(千代自身のこと)、同じような不具者を(東郷青児のこと)~~」
必要以上におとしめず、浮かれすぎず、かといって冷静すぎず説教くさくもない。
不思議なことに、この作品内では終始この感覚が下地にあり、生傷が、ナマナマしく感じない面白さがあります。
人間は欠陥があるからこそ、惹かれるのだということを目の当たりにしていくような、安心感を覚えます。

今回、宇野千代役を演じた越谷真美が、
「宇野千代って、恋愛の勝組の人かと思っていたんですが、そのイメージが覆されました」
と、ボソっと言っていました。
恋愛に疲れた方、悩んでいる方。ジワジワくる魅力の『千代と青児』必見です!

小笠原くみこ

**********

馬込202212_A4_Omote_fin_ol 馬込202212_A4_Ura_fin_ol

OTA アート・プロジェクト
馬込文士村 空想演劇祭2022 作品上映&[同時収録]生ライブ

日時=2022年12月17日(土) 11:00開演/15:00開演
会場=大田文化の森 多目的室

【チケット購入】
https://yyk1.ka-ruku.com/ota-s/showList

稽古場日誌一覧へ