稽古場日誌

馬込文士村 空想演劇祭 安部 みはる 2023/01/25

誰の目でみるか

『馬込文士村 空想演劇祭2021』の作品『おたふく』の視聴券が今年も販売される。
早いもので撮影はもう一年前のこと。
『おたふく』は山本周五郎の短編で江戸時代の一組の夫婦とその周辺の人々を描いた作品だ。
非常に慎ましく日常的でじんわり心温まるお話である。
その『おたふく』を複数台のハンディカメラとスクリーンを用い、演じている俳優とそれを撮影する俳優、映像を切り替える俳優……と様々な役割と視点が同時に同じ空間に存在する作品として公開した。
実のところ、昨年は、出演している自分でも何が起こっているのか、何が面白いのかわからなかった。一年経って改めて考えてみると、少しだけ魅力がわかってきたような気がする。

キーワードは「誰の目でみるのか」だ。
例えば、背中の曲がった老女が後ろ向きで農作業をしている写真を見たとする。
ある人は「高齢になっても働かされてかわいそう」と思う。
またある人は「牧歌的な癒される光景」と思う。
別の人は「女性にばかり農作業をさせて差別だ」と感じる。
「風景と人物の構図が最高だ」と思う人もいるかもしれない。
見ているあなたが何を大切にしているか、どんな生き方をしてきたかで演劇や絵画や音楽はいろんな見方ができる。
それを思うとき、自分は出来るだけ多くの視点を持ちたいと思う。
男の目、女の目、虐げられた人の目、ハイソサエティな人の目。いろんな目で世界を見ることができたら最高だ。

話は戻って『おたふく』。
この作品は実際にいろんな視点が同時に現れる。山の手事情社の本公演ではあまり見ないタイプのお芝居だ。
実は、見ているあなたの視点も作品の大事な一部分として取り込まれている。
見ることは参加することと同義だ。

『おたふく』に限らず、今年の『千代と青児』『花物語ごっこ』も昨年公開作品もいろいろな視点を持って何度もご覧いただきたい作品ばかりだ。
見るたびに、違う解釈が湧き出てくるに違いない。

安部みはる
※ 2021年度作品『おたふく』出演

『おたふく』お手紙

 

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OTA アート・プロジェクト『馬込文士村 空想演劇祭2022』

■視聴券
2022年度制作(2作品セット) 1,000円(税込)※劇団 山の手事情社『千代と青児』含む
2021年度制作(4作品セット) 1,500円(税込)※劇団 山の手事情社『おたふく』含む

■視聴券販売期間
2022年12月15日(木)~2023年2月14日(火)23:59

■購入・視聴サイト
Confetti Streaming Theater(カンフェティ・ストリーミング・シアター)

詳細情報や予告編の視聴は、特設ページ をご覧ください。

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