稽古場日誌

YouTubeにて、100年前のモノクロの映像をカラーにした動画を見た。
映っている人物は変わらないはずなのに、まるで今生きているように思えた。
映画のセットの中にいる、現代の俳優さんたちみたいで。
100年前の電話の音声、なんていう動画もあって、喋っている内容も言葉遣いも何ら今の私達と大差ない。
なんだ、私と同じ、ニンゲンだったんだなあ。と感動した。

『馬込文士村 空想演劇祭』に関わることで、自分の暮らしている土地についても、同じような感覚になることがあった。
古くから、富士山が見える坂がある。
幹線道路がある。
海岸がある。
丘がある。橋がある。寺がある。
きっと馬込文士村に住んでいた作家は、同じものを見たことがあるはず。
同じ場所で、似たような風を感じて、似たようなご飯を食べて、他愛のないことで笑っている。
私と同じ、ニンゲンだったんだ。

観光地によくある「川端康成が泊まった宿!」とか「三島由紀夫が座った席!」とか「尾崎士郎が食べた蕎麦!」とかいまいち興奮どころがわからなかったのだが。
土地に文学があり、それを大切にすることの重要性が、段々とわかってきたような気がする。
私なりにこの演劇祭を通して、その感覚をたくさんの人に味わってもらいたいと思っている。
いちど文章に封印されたその時代の記憶を、紐解くような快感。
なかなかに良いものだから。

鹿沼玲奈

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OTA アート・プロジェクト『馬込文士村 空想演劇祭2022』

■視聴券
2022年度制作(2作品セット) 1,000円(税込)※劇団 山の手事情社『千代と青児』含む
2021年度制作(4作品セット) 1,500円(税込)※劇団 山の手事情社『おたふく』含む

■視聴券販売期間
2022年12月15日(木)~2023年2月14日(火)23:59

■購入・視聴サイト
Confetti Streaming Theater(カンフェティ・ストリーミング・シアター)

詳細情報や予告編の視聴は、特設ページ をご覧ください。

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