稽古場日誌

ニュージェネレーション(体験談)研修生 鍵山 大和 2023/03/07

ニュージェネレーション体験談

2021年4月、俳優として漠然とした不安を抱えていた僕は自分を変えたいと思い、山の手事情社のニュージェネレーションへの参加を決めた。

しかし「頑張るぞ!」と鼻息を荒くして入所した僕を地獄のストレッチが襲った。
「あ、あ、あーーー!! ちぎれる、裂けるう!!」
ストレッチの他にもランニング、筋トレ、発声練習……俳優としての体作りの基礎トレーニングの量は尋常ではない。入所後2ヶ月は毎日が筋肉痛だった。この時期は稽古に行きたくなかった。

そしてようやく体が慣れてきた頃には《フリーエチュード》! 
エチューダー(指導を担当する劇団員)からルールのみを説明されて「よーいどん!」お手本も台本もない。
スベるスベる、大滑り……面白いものが出るまで滑らされる。そして自分がもう無理だとなっている時も「まだあるでしょう、もっと見せてよ‼︎」と言わんばかりにエチューダーがニコニコしながら見ている。そして足掻いた末に何も出てこない時もあれば、ある時その人の根底にある何かが出てくる時もある。その瞬間のためにニュージェネレーションもエチューダーも必死だ。      

稽古の日はヘトヘトになり泥のように眠る。翌朝早朝バイトにいく。バイト中も稽古のことを考える。
さらに厄介なことは通常稽古だけではなく、《ものまね》や《ルパム》の発表もあるということだ。とてもじゃないけど追いつかない。

ある時から僕は出来ないことを片っ端からノートに書き綴った。書きたいことはたくさんあったがA4の紙見開き1枚を満たした時に書くのをやめ、「とりあえず何かしら出来る様になろう!」と、家の近くの公園で黙々と自主稽古、どうしてもやる気が起きない時は稽古場に行き強制的にやる気を出していた。
そして出来るようになった時、ノートに書いてある出来ない事を斜線で消していく。
しかし稽古の度に出来ない事は増えていく。稽古じゃない日でも稽古のことを考える。

演劇バイト演劇、ベタ稽古に入ってからは演劇演劇演劇演劇……1年間本当に演劇漬けだった。だけど不思議ときつくはなかった、むしろ楽しかった。

それはきっと、稽古場にはあらゆるきつさを上回る熱量と自分を突き動かす表現への飢えがあったからかもしれない。

そして振り返ると、たった1年だったけど、こんなに自分や演劇と向き合える1年は味わったことがなかった。
現状の自分にヤキモキしてる人は是非この1年を味わってほしいと思う。そう簡単に変われなくても、変わるための火種は確実にあなたの元に残るはず。

演劇最高!

鍵山大和

《フリーエチュード》… 一定のルールや設定に基づいて即興的に行うシーン
《ものまね》… 身近なひとのものまね
《ルパム》… 俳優自身の創作によるダンス

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劇団 山の手事情社
2023年度準劇団員(ニュージェネレーション)募集
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2023年度募集チラシ(表)ピンク

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