稽古場日誌

デカメロン・デッラ・コロナ 小笠原くみこ 2023/03/12

森下スタジオのこと

池上をしばらく離れ、外部のスタジオをお借りして稽古。セゾン文化財団さんが運営している森下スタジオ。思えば、外部の稽古場で稽古するのは久しぶりだ。

あ、そうだ。
3年前、対岸の火事だと思っていた未知数のウイルスによって、イベント中止・縮小の要請が出た後に、この森下スタジオで稽古をしていた。外部の稽古場はそれ以来だ。あの時はマスクをする人が急激に増えて、花粉症の私はマスクが売り切れていて困った覚えが。

仮セットを組むために、大量の物をスタジオに搬入する。搬入車は2トンロングのトラック。大きいトラックで運び入れるのも久しぶり。今は、様々な形状や色のマスクを全員がしている中での作業。ザワザワした中でマスク越しでも声が通る。さすが演劇人。舞台監督の指示の元、スタジオ内はインパクトやノコリギの音が響き、バミリ用のテープがアチコチに貼られていく。3年前は在籍していなかった新人君たちも、先輩に教えてもらい不慣れながらも率先して作業をし、仮セット作り。

あ、そういえば。
この森下スタジオの管理の方で、いつもお世話になっていた方をお見かけしないなあと思い、受付で聞いてみると退職されたそう。お礼が言いたかったなあ。

私たちがお借りしている部屋とは別部屋で別団体さんがお稽古をしている。そうそう。森下スタジオで稽古をしていると、別部屋でお稽古している団体さんがお知り合いだったり、知り合いの方がいたりして、お互いの休憩時間が重なって、ロビーで談笑したり。自分たちの専用稽古場での稽古もよいが、こうして違う団体さんが身近に稽古をしている現場だとなんだか張り合いが出て、心の中で「お互いにガンバリマショウ」と勝手に思う感覚がよみがえる。スタジオ内は、とても広くて天井が高い贅沢な空間。舞台の大きさは実寸でとれ、そこに仮セットが組まれる。客席は組めないけれど、具体的に想像できるところまで見えてくる。

3年前は、公演の断念を決めた後、森下スタジオに来たんだった。
公演はしないけれど、それでも一旦作品を形にするために、仮セットを組んで、通し稽古をして。3年前の作品ではなく、全く別物の新作を創作して、公演に向かっているのが不思議に感じる。それも、3年前とは全く違う取り組み方の創作。久しぶりの森下スタジオに感慨深い思いとシャキっとする気持ちを抱えつつ、目の前の作品の仕上げを粛々と進めよう。

小笠原くみこ

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劇団 山の手事情社 公演『デカメロン・デッラ・コロナ』
日程=2023年3月24日(金)~26日(日)
会場=池上会館 集会室

チケット発売中!!
公演情報は こちら

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