稽古場日誌

ワークショップ学生のための演劇サマー&ウィンタースクール 鍵山 大和 2023/04/10

学生のための演劇ウィンタースクール2023 リポート

こんにちは。俳優部の鍵山です。
2/9から3日間、「学生のための演劇ウィンタースクール」が開催され、川村 岳さんがメイン講師を担当、僕はアシスタントとして参加させていただきました。
岡山県から来た高校の演劇部部長や演劇系の大学生、そして映像での演技経験はあるけど演劇は初めての大学生など、全国各地から様々な方が集まってくださいました。
ワークショップ前の準備運動中に「リモート演劇やったことある?」「そもそもコロナのせいであまり大学演劇部の活動はほとんどない」こんな会話が聞こえました。
演劇への飢えと「この3日間で何か掴んでやる」という強いオーラを彼らから感じました。

初日は柔軟運動、筋トレ、発声練習などの基礎訓練をメインに、2日目以降はいろいろな種類の《フリーエチュード》や《ショート・ストーリーズ》と呼ばれる寸劇作りを行います。台本は使いません。座学はほんの少しだけでとにかく体を動かします。

初めてやる《フリーエチュード》に戸惑う学生達。
特に印象的だったのは《メイクマシーン》(マイムで前の人から受け取ったモノを加工して、別の物に変えるという即興シーン)での一場面です。
この《メイクマシーン》はやってみると意外と難しい、地獄のフリーエチュードなのですが、例に漏れず学生の皆さんもこの沼にハマっておりました。
一発OKはなかなか出ません。特に最初の人は大苦戦。当然です、初めてやるのですから。
「もっと大きな声出るでしょ?」
ダメ出しが飛びます。その参加者は大きな声を出すのが苦手なようで、どうしたら大きな声が出るかわからないもどかしさがこちらにもヒシヒシと伝わってきました。
何度もトライして、ちょっとずつ大きくなる声。しかしまだ足りない。
そこで講師の川村さんが、
「室伏のように叫んだらどうか?」
といい、他の参加者の方にハンマー投げのハンマーの役になってもらいました。すると、
「トゥオリゃぁぁぁぁぁ!!!」
こちらが驚くほどの大きな声が!! 
しかし「私って、こんな声出るんだ……」と誰よりも驚き興奮しているのは声を出した本人のようでした。

普段の自分と違うことをやるのは怖いです。しかしそこに挑戦しない限り何も変わらないと感じました。

しかしまだまだ《メイクマシーン》は続きます。
ある学生さんは暴れている獣を捕まえて、その角をへし折るという少々攻めたシーンを作りました。
講師の川村さんはそのアクションを見て笑いながら「もっと面白くできるでしょ?」
ダメ出しが飛びます。すぐさまトライ。
「うん、さっきよりいいよ、次はもうちょっと暴れてみて」
もがきます。
そして最終的に物凄い熱量で獣と戦うシーンとなりました。傍らからみるとバカバカしいのですが、彼女の熱量があまりに高いので、もはやカッコいいと思ってしまう程でした。
そしてワークショップ終了後、彼女は、「こんなに自分の限界を受け入れてくれる場所があるんだ」と言っていました。

確かに演劇をやる上で「ここまでやっていいのか?」と思うことは多々あります。
しかし山の手事情社ではやりすぎという言葉はありません。限界までトライすることを求められます。
そんな場所だから、全員が最善を尽くし、どんなチャレンジも許される空間になったんじゃないかと思います。

最終日に《ショート・ストーリーズ》(参加者自身の体験などをもとに創作した寸劇)を発表し、全プログラムを終えました。

ワークショップを終え、悔しそうだったり、涙を流したり、逆にとても楽しそうだったり、参加者の表情は様々でした。
彼らがどんな状況で演劇をしていて、俳優としてどんな切実な悩みを持っているか、少しは共有することが出来たと思います。自分にとっても改めて演技や演劇について考える良い機会になりました。
たったの3日間ですが、最終日には別れるのが名残惜しいくらい仲良くなっている。演劇はすごいコミュニケーションツールだと改めて思いました。

学生の皆様、このワークショップに来てくださり本当にありがとうございました!

鍵山大和

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