稽古場日誌

久しぶりに山の手事情社の演技スタイル《四畳半》に取り組んでいます。

約5年ぶりの海外公演。ルーマニアは、2009年から数えて5回目になります。

思えば結構ルーマニアに行っているのだなと思います。
はじめて行った2009年では、シェイクスピア作『タイタス・アンドロニカス』をシビウ国際演劇祭メイン劇場【ラドゥ・スタンカ劇場】で公演しました。初年からメイン劇場でやったことは本当にすごいことなのだと思っています。主宰の安田の意気込みたるやものすごかったこと覚えています。

私はその時タイタス・アンドロニカス役をやりました。
この大舞台でしかも一回公演というプレッシャーに何度も押しつぶされました。
もう本当に演劇を辞めよう、逃げようと何度も思いました。体重は15キロ痩せ、歩行するのもやっとの状態でした。それでも容赦ない稽古は続きました。
死ぬほど稽古をやっても不安は全く拭えずシビウ国際演劇祭の本番に突入しました。
口から心臓が出る感じがし、今まで嗅いだことのない異臭を放つ胃液が口の中に上ってくるあの感覚。今思い返すだけで心臓が「きゅっ」と締め付けられます。

ですが、振り返ってみて逃げなくてよかったと心から思っています。人生でこんなに「もうだめだ~」と思う経験ってできないし、おそらく今の世の中なかなかできないことなのだと思っています。
そして何より、シビウ国際演劇祭で評価されたこと。ここから数年間毎年のようにシビウに行き演劇ができたこと。そして今に至っていること。
山の手事情社の歴史的1ページに逃げずに居たことで体験できたことは、お金では買うことのできないとても貴重なものです。

私は演劇活動を27年続けてきて、あの2009年のような感覚を体験することはもうないだろうと思っています。経験してしまったので。
だからこそ気を抜くのではなく、改めて全力で芝居をしていこうと思います。

日頃ご愛顧ならびにご支援いただいている皆様、日本に残って演劇活動を続けている劇団員の皆さんのためにも何かしら異国の地で成果を上げて帰ってこようと思っています。

今後の山の手事情社に是非ご期待ください。

浦 弘毅

**********

『かもめ』ルーマニアツアービジュアル

『かもめ』ルーマニアツアー情報

『かもめ』ルーマニアツアーのサポートを一口5,000円でお願いしています。
御礼に特製トートバッグをお渡しいたします。
詳しくは こちら をご覧ください。

稽古場日誌一覧へ