稽古場日誌

かもめ ルーマニアツアー 鹿沼 玲奈 2023/07/14

友人に会うように

今回のツアーで、私は劇場のロビー係を担当しました。
お客様の入場状況をみて、舞台裏にいる舞台監督に無線で開演の合図を出します。
どんな方が観に来てくださるのか、劇団の中で一番最初に知れるのが私ですし、逆に、お客様が一番最初に出会う劇団の人間が私ということになります。

お客様はとてもリラックスして劇場にいらっしゃってました。
特に、ティミショアラのジャーマン・ステート・シアターのお客様の表情はとても豊かでした。
私を見ると、東洋人が珍しいのでしょう、「おや」と身体が少し止まります。そして私が「ブナセアーラ(こんばんは)」「ムルツメスク(ありがとう)」とお声掛けすると、みるみるうちに笑みが全身に広がります。「やあ、どんなもんだか、来てみたよ」そんな感じです。
私以外のロビー係もいましたが、もちろんみんなルーマニア人。彼らの接客する態度も軽やかです。ぜんぜんかしこまらない。すこし力を入れるのはチケットの番号を確かめるときだけ。あとは「やっほー、楽しんでね」そんな感じです。

日本では舞台なんて、一生に一度観るか観ないかの方もいらっしゃるでしょう。そしてそれは「特別」な経験だし、特別な経験は「緊張」します。
でも、街に国立の劇場があり、年間を通じてリーズナブルな価格で作品を市民に提供している環境だと、それはぜんぜん特別でもなく、緊張もしません。
友人に会うように、劇場を訪れる。そして友人に会うように、芝居を受け入れる。
無事に開演し、薄い扉の向こうから聞こえる俳優たちの声を聞きながら、「こういう雰囲気もいいなあ」と、ひとりごちていました。

シビウ公演も、ティミショアラ公演でも、確実に「ウケて」いました。
終演後、安田を取り囲み、サインを求めるお客様。
すごいものを観てしまったと口々に囁く、ざわめき。満足そうな笑顔。みなさんとても興奮していらっしゃいました。

私は通訳も兼ねての参加でしたが、舞台裏で事故も混乱もなくスムーズに舞台の設営ができて本当に安心しました。
自分に自信も持てました。劇団としても今後につながる公演になったと思います。
応援してくださった皆様に感謝いたします。
ありがとうございました。

鹿沼玲奈

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7/9に帰国後の生配信を行ないました。アーカイブをご覧いただけます。

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