稽古場日誌
馬込文士村演劇祭/馬込文士村 空想演劇祭 藍葉 悠気 2024/09/25
こんにちは。
俳優部の藍葉悠気です。
唐突ですが、僕は映画や演劇などを観終わった際、
「深そうに見えて、意外と浅いな」
と思うことがあります。
ぶっちゃけ、これはあまり、いい感想ではありません。
その作品に対して、僕はいい観客になれなかったな、と残念に思います。
逆に、
「浅そうだと思っていたけど、意外と深かった!」
と思うこともあります。
これはとてもいい感想で、作品と観客の間に理想的な関係が築かれた瞬間だと思います。
ですが、この「浅い」とか「深い」とかって、いったい何なのか。
とても不思議な感覚だなぁとも思うのです。
まさに今回、山の手事情社が「馬込文士村演劇祭2024」で上演する『ヘンゼルとグレーテル』及び『ガリバー旅行記』は、そういった「浅そうに見えて、意外と深い」という感想を実感するには、ぴったりの題材ではないでしょうか。
元々は児童書のイメージが強い二作ですが、一方は中世ヨーロッパの大飢饉の話、もう一方は全体主義国家に対する政治風刺的な話と、どちらもなかなかヘビーな題材が物語の元となっています。
同時に、そういった元となっている題材の「深さ」があったからこそ、今日に至るまで多くの人に読まれ続け、読んだ人の心を惹きつけ、考えさせ、長く愛されてきたのではないかとも言えます。
しかし、必ずしも作品というのは「深ければいい」という訳でもありません。
じつは、もう一方の「浅そう」という感覚も非常に大事なことで、分かりやすさ、馴染みやすさ、楽しみやすさ、というのが無いと、それはそれで観客が作品に入っていくのが難しくなってしまうでしょう。
即ち、いかに「浅い入り口」から誘って「深い出口」へと導くか。
そこに作品作りにおける作り手の工夫と苦心が用いられるものだと思います。
……というようなことを、本番に向けての稽古を見学しながら、思い巡らせておりました。
果たして、山の手事情社が見せる『ヘンゼルとグレーテル』と『ガリバー旅行記』は、いったいどれだけの人々を「深い出口」に連れていってしまうのか。
森を彷徨う兄妹のように、はたまた小人の国に漂流した旅行者のように、うっかりと物語の世界に迷い込むことを楽しんでいただけたら幸いです。
それでは本番にて、お待ちしております。
藍葉悠気
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OTA アート・プロジェクト
馬込文士村演劇祭2024
~ものがたりの世界を楽しもう~
演劇上演『ガリバー旅行記』『ヘンゼルとグレーテル』
日時=2024年10月5日(土)・6日(日)
会場=山王ヒルズホール
詳細は こちら をご覧ください。