稽古場日誌
私と演劇=山の手事情社の出会いは、学生の頃。一般市民が出演できる市民劇の出演者募集という掲示を見て、応募したことがきっかけでした。演劇のことを何も知らずに参加してみると、演出が安田雅弘という人で、『ロミオとジュリエット』が上演作品でした。私は、ロミオの親友マーキューシオという大役になり、学芸会以来の演劇にはまってしまいまして、翌年、また市民劇に応募しました。今度は『十二夜』という作品で、これもシェイクスピアが原作です。この劇ではアンドルー役になりました。公演が終わる頃には、私はこの道が向いていると思い込むようになり、山の手事情社の研修生という道に進み、演出部に所属することになりました。
私が入団して数年した頃から、山の手事情社はシェイクスピアをはじめとした古典作品に、本格的に取り組み始めます。当時、劇団の創作スタイルを変更する移行期で、演技を様式にしようと画策すべく、相性が良いと思われた作品ということで古典作品になったのでした。山の手事情社がこれまでにフルで取り組んだシェイクスピア作品は6作品(※①)。劇団創立20周年、40周年では『夏の夜の夢』を上演、初めてヨーロッパで公演をしたのは、『タイタス・アンドロニカス』。さらに山の手事情社では上演していない作品を、劇団員が演出やサポートをするという形で市民劇でも上演しています(※②)。劇団主宰の安田は、初めて観た劇がシェイクスピアだったそうです。節目節目で、シェイクスピア作品に関わってきた山の手事情社は、シェイクスピアが好きと言っても過言ではないでしょう。
そして40周年の今年度。2025年2月にシェイクスピア新作二本立て公演『オセロー』と『マクベス』をおこなうこととなりました。夏に上演した若手公演『夏の夜の夢』に引き続き、私は『オセロー』を演出します。こんなにシェイクスピアと絡む年になるとは。そして、まさか自分がシェイクスピアの“四大悲劇”を演出することになるとは!!!! “四大悲劇”(※③)というのは、シェイクスピアの円熟期に書かれ、登場人物たちの抱える悩み、欲望、葛藤は深みがあり、特に物語に厚みがある作品です。主宰の安田曰く、「“四大悲劇”を演出するということは、その演出家の本気度が見えるから、実力が試される作品」とのこと。震えが止まりませんが、こういう運命なのだとしっかり受け止め、精一杯取り組みます。
今回の公演は、演出も出演者もチームに分かれておこないます。お気に入りの俳優が出演する公演はもちろんですが、もう一方の作品もご観劇いただけたらと思います。山の手事情社の新たな一歩に、ぜひ立ち会っていただければ幸いです。
小笠原くみこ(『オセロー』構成・演出)
※① … 『タイタス・アンドロニカス』『夏の夜の夢』『ロミオとジュリエット』『トロイラスとクレシダ』『テンペスト』『リア王』
※② … 『十二夜』『じゃじゃ馬ならし』『ハムレット』
※③ … 『ハムレット』『リア王』『オセロー』『マクベス』の4作品
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劇団 山の手事情社 二本立て公演
『オセロー』『マクベス』
日時=2025年2月21日(金)~25日(火)
会場=シアター風姿花伝
詳細は こちら をご覧ください。