稽古場日誌

オセロー/マクベス 鍵山 大和 2024/12/10

僕と山の手事情社の40年、比べてみた

皆さんこんにちは、鍵山大和です。山の手事情社40周年二本立て公演『オセロー』『マクベス』の『オセロー』に出演いたします。40周年かあ。27歳、入団3年目の僕はその月日が想像できません。ですが、劇団の一員としてそれではいかんと思い、今回いろいろと調べ当時の映像も改めていくつか観てみました。そして自分の歴史と重ねてみたら、40年劇団を続けることのすごさが少しわかった気がしたので、紹介させていただきます。

劇団ホームページの年表を見たところ、山の手事情社にはいくつかの大きな転換点があり、時期によってその作風は大きく異なっているようです。(以下、大まかな区分)

黎明期[1984-1988]
集団創作時代[1989-1994]
《ハイパーコラージュ》時代[1994-1996]
《四畳半》実験時代[1997-2009]
シビウ国際演劇祭に参加以降[2009-現在]

40年前、1984年に旗上げされた山の手事情社。その当時は今では考えられないほど演劇が盛んで小劇場ブームというものがあったらしい。山の手事情社は学生劇団、当然ながら出演者も皆若い。ツルツルだあ。
圧倒的なエネルギーを持ちながらも洗練されている今の山の手事情社。エネルギーはそのままに、若さゆえの疾走感とはちゃめちゃさが舞台上には存在していた。
一方、40年前というと、当時ハタチだった僕の父が母と出会ったころで、3人兄弟末っ子の僕は生まれてすらいない。

時は進み1989年、集団創作時代。
それまでは安田や創立メンバーの池田成志さんが台本を書いていたが、この時期から参加メンバーそれぞれが意見を出し合い、シーンを作り、実験を重ねながら作品を作っていく創作スタイルへと変遷していった。
この時期の稽古が今の山の手事情社独自の俳優養成法《山の手メソッド》を作っていったのだと思う。
観ていて、素直に笑えるし、表現の豊かさには思わず感心してしまう。僕が学生だったらこの時期の山の手事情社に憧れて、ついつい真似をしてしまったかもしれない。でも残念ながら、僕はまだ生まれていない。同時期、鍵山家では遠距離恋愛をしていた父と母が無事ゴールイン。鍵山家の第一歩だ。

また時は進み、1994年、《ハイパーコラージュ》時代の到来だ。舞台中央で芝居が進行していると思えば、はしっこで全く関係のない芝居が行われたり、謎の歩き方で舞台を横切る人がいたりと、《ハイパーコラージュ》はとにかくカオスな芝居だ。見ている僕の脳の処理で追いつかず、脳がパンクする。個人的に山の手事情社の芝居は劇場で観るのと映像でみるのでは全く印象が違うと思っているので、《ハイパーコラージュ》は劇場で1番見てみたいと思う芝居だ。
そして、このころの鍵山家では長女の誕生に続き、次女が生まれた。もう少し、もう少しで僕が生まれる!!!!

迎えた1997年、いよいよ僕が誕生しました。同年に劇団は、新しい演技様式を確立しようと模索し始めた。いまや山の手事情社独自の演技スタイルとなっている《四畳半》の実験が始まったのは、なんと27年も前のことらしい。
現在の基本的なルールは、
■舞台にいるときはまっすぐ立たないこと
■台詞を発しているとき、受けているときは止まる
■それ以外の舞台上にいる人は、スローモーションで動き続けること
この三点だ。
しかし、これらのルールは膨大な実験を経て辿り着いたもので、そこに至るまでに散っていったアイディアの屍の山があるのだ。
山の手事情社がそんな実験を延々繰り返しているうちに、赤子だった僕も気づけば中学生になっていた。ツルツルだった肌にはニキビができ、声変わりも始まっていた。

そして2009年、山の手事情社は《四畳半》を引っ提げて、世界三大演劇祭のひとつシビウ国際演劇祭に行き、そこで『タイタス・アンドロ二カス』を上演、高い評価を受けた。
その後も新たな表現を模索して変わり続ける山の手事情社と《四畳半》。
一方、僕は演劇とは無縁なまま、中高6年間を終えた。そして2015年、大学生になった僕は演劇と出会った。

この出会いが僕の人生を大きく変えてしまいました。
大学で僕が在籍していた学科は就職率100%であることが売りで、そのことで両親も安心していた。
しかし演劇沼にハマった僕は就職をせず、演劇の道に進みました。上京後は「鳥と舟」という劇団に参加、コロナ禍を経て、2021年に山の手事情社と出会い、1年間の準劇団員を経て入団しました。そこで僕は今まで見たこともない舞台作品を作ろうという情熱と執念、そして俳優の面白さを知り、自分も一緒に作品作りをしたいと思い入団を決めました。
振り返ると、膨大な稽古時間とたくさんのダメ出し、見たくもない自分を見つめ他人と向き合い作品のことを考え続ける日々。3年間分の思い出だけでも胸焼けしそうですが、そんな自分を変えるための時間が僕には必要なんじゃないかな。今までの自分には飽きました!!!! それは僕と同い年の《四畳半》も一緒で、新しい時代がそろそろ来るんじゃないかと個人的には思うのです。

2025年、『オセロー』『マクベス』の二本立て公演。今まで、膨大な日々を演劇という実験に費やしてきた劇団 山の手事情社。そんな劇団がどんな解釈、表現方法でシェイクスピア四大悲劇を2本同時に上演するのか、勝負の公演だと思います。
そして、鍵山大和の現在を観に、劇場まで足をお運びいただけたら幸いです。

鍵山大和

**********

劇団 山の手事情社 二本立て公演
『オセロー』『マクベス』
日時=2025年2月21日(金)~25日(火)
会場=シアター風姿花伝

詳細は こちら をご覧ください。

★『オセロー』『マクベス』omote ★『オセロー』『マクベス』ura

稽古場日誌一覧へ