稽古場日誌

テンペスト 田中 信介 2014/12/15

身体の基礎力

山の手事情社独自の稽古法《山の手メソッド》その一つに《歩行》というものがある。

読んで字の通り歩く稽古なのだが音楽をかけてそのカウントに合わせ、決まった歩き方をしていく。決して奇抜な動きをするわけでないのだが一つの決まった形に自分の身体を変えていくという作業がなかなかに難しい。

人によってそれぞれ肩があがってしまったり顎が出たりと身体のクセが存在する。それをこの稽古を通じて意識的に無くしていき細部まで自分の身体を思い通りにコントロール出来るようにするわけだ。 しかしこの《歩行》自体が舞台上で使われるわけではない。じゃあ別に出来なくてもいいのでは?  なんて思ってしまうこともあるのだが先日「テンペスト」に向けたイメージシーンを作っていた際、やはり歩行出来なきゃだめだ自分!  と痛感することとなった。

妖精が嘲笑っているというイメージで身体の形を色々考えて試していたのだがどうにも頭の中にあるイメージと実際に表に出る自分の身体、チームメイトの身体に齟齬が生じる。この足の沈みは淀みなくしたい!  と思ってもなかなか思ったように出来ないのだ。

公演までの限られた時間の中でより良いシーンを作るために湧いたイメージを瞬発的に表現し、ダメなものは捨て、良いものを選ぶ作業を繰り返し行う。しかしその時身体の基礎的な運用法が染み付いていないとどうしても時間がかかってしまうのだ。
やはり長い歴史の中で作られた《山の手メソッド》だ。ちゃんと本番に繋がる稽古として考えて作られていると再認識。

 私の身体にこの稽古から得た基礎力が宿り劇的な身体表現が出来ているのかどうか、是非劇場まで確かめに来てください。

田中信介

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