稽古場日誌

ダイバー 鯉渕 翼 2015/02/22

修了公演の魅力

今回の修了公演のテキストに使用される「ヴォイツェク」。
内容は、主人公である軍人ヴォイツェクが、浮気をした情婦を刺殺するという実際に起きた痛ましい殺人事件を素材とした物語だ。
精神異常者として書かれる主人公を中心に所々難解で、しかも未完という内容ながら、幅広く解釈ができて、見方によって内容ががらりと変わる作品だと思う。

修了公演の魅力は幾つか有るが、まず何よりも役者一人一人にスポットが当たることだろう。
劇中、役者の内の誰かが中心になったシーンがテキストとは別に時に関係し、時に関係なく幾つも盛り込まれ、
一年間の研修プログラムの間に洗練、または新しく発見した技術やネタを余すことなく発揮することができる。
本公演ではできない、自分の自分による自分のためのシーンがある事だ。
もちろんネタが採用されなければダメなのだが、面白ければ山の手事情社は必ずどんどん拾ってくれる。
製作段階で面白い物だけで構成された舞台なのである。面白くないわけがない。

研修生の皆さんには、是非一年の間に拾得した全てを、社会の中で普段は抑圧されている本性とでも言えるものを発揮してもらいたいと思う。
出番が力でもぎ取れるのも修了公演の魅力だ。
いったいどんな内容になるのか、何が繰り出されてくるのかまだわからないが、完成品が早く観たい。

鯉渕翼

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