稽古場日誌

ダイバー 髙橋 真理 2015/03/08

潜る人々

こんにちは、俳優部の高橋です。
3月13日から研修生の修了公演、『ダイバー』が開演します。

ダイバー・・・とはなんぞや?

意味にすれば、潜る人、潜水する人。
とすれば、何に潜るのか。

今回の公演は、劇作家ゲオルク・ビューヒナーの「ヴォイツェク」が基軸となっている。
「ヴォイツェク」とは実際にあった殺人事件を元に作られた戯曲である。
精神異常に侵された軍人ヴォイツェクが浮気した内縁の妻マリーを殺してしまうという話である。
そして僕自身この戯曲を読んでみたが難しい、かなり難しい。
正直何を言っているかさっぱり分からないセリフも多々あった。
何より登場人物達誰1人としてまともな人間がいない。

こんな戯曲に挑戦している研修生達に脱帽してしまう。
精神異常に侵されていく様、自分の妻を殺す感覚、それを端からみて楽しむ様、普通に生きてきたならまず体験しえない感覚であると思う。
しかし、この戯曲をやり、役を演じる以上は、この感覚は一体自分の中にあるどの感覚に近いのかを想像し、何故この役の人間はこれを見て喜ぶのか、など自分の中の感覚は勿論、他者の感覚にも深く潜り、想像し探らなければならない。

あ・・・なるほど。
だから『ダイバー』なのか。

今、研修生達は必死に想像という海にダイブし、自分以外の何者かになろうとしている。
潜っては失敗し、潜っては失敗しの繰り返しである。
このダイビングが結果上手くいくかは分からない、だが自分の殻を必死に破こうとダイブする姿は僕はとても格好いいと思う。
だが、できるなら是非とも「ヴォイツェク」という荒波を乗り越えて成功して欲しい。

健闘を祈る!

いよいよ始まります、修了公演『ダイバー』。
今期研修生達の集大成となります。
皆様の御来場心よりお待ちしております。

高橋真理

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