稽古場日誌

ダイバー 髙坂 祥平 2015/03/10

鎖に結ばれた

私は稽古場日誌を書くためにファミレスに向かい、パソコンの画面を開いたわけだが、完全に間違いであったことに気付いた。

周りの人間がうるさいのと面白いのとで、全然集中できねぇ!

右を向くと、中年女性の2人組が恋愛話に花を咲かせていた。もう年齢が年齢なのか恥じらいが一切なく、生々しすぎる内容をサラッと語ってはけなし合っていた。けなして笑いのネタにすることでお互いの傷を舐め合っているように私には見えた。痛々しいことこの上ない。

というか、この中年女性の会話を聴いていて、そういえば研修生の時って、とっても痛々しかったな・・・
ということを思い出した。

山の手事情社の研修生における稽古では、とにかく自分の汚い部分を曝け出すことを強制される。もちろん研修生に限った話ではないが、山の手事情社の扉を叩いた以上、覚悟しなければならない。

私も例外なくそうであった。板の上で面白い存在でありたいがために、生き残るために、ネタがなくなるともうどうしようもなくなり、今まで誰にも言ったことのないような赤裸々な体験を語ったりした。
今まで誰にも言えず、溜め込んでいた感情を、気づけば大声でその時の研修生同期とエチューダーに向かって叫んでいたものだ。

研修生時代=1年を通じて行われる大カミングアウト大会

だと私は思う。
そして、今年も例外なくそうであるはずだ。むしろ、そうでない研修生時代なんてないはず。

板の上で輝きたいと、役者なら誰でも思う。研修生はこの1年間面白い存在でありたいと思うがために、たくさん罵倒され、自分の汚い部分をこれでもかと曝け出し続けたと思う。そして、笑われる快感を知った。

でも、曝け出すだけが演劇なんかじゃない! それだけで満足するな! だから、ダメ出しは常に雨あられ・・・

きっと相当追い詰められてるんじゃないかな?

もうじきその1年の集大成でもある舞台が幕を開ける。彼らがどんな事に苦しみ、どんな事を知ったのか、面白かった事、楽しかった事、味わった事のすべてをきちんと曝け出してくれるはずだ。

研修生8人の壮絶で美しい勇姿を是非劇場で確かめてみてください。

高坂祥平

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