稽古場日誌
鹿沼 玲奈 2015/06/04
はじめまして。
研修生を経て今期から俳優部に所属になりました、鹿沼玲奈(かぬまれな)です。
この稽古場日誌を読み続けていただいている方は、お久しぶりです。
劇団に入団しまして2ヶ月が経とうとしております。
いやー、苦しい、つらい日々です。
山の手事情社の稽古は、マジでつらいです。噂で聞いているという方、噂は本当です。毎日泣きそうになりながら稽古をしております。実際帰り道でひとり、マジ泣きすることもあります。
最近は蕁麻疹が止まらないし、夜になると咳も止まらない。全身痣だらけで体重もどんどん落ちていく。ぶつぶつと、狂ったように小声で台詞をつぶやく癖までできてしまった。久しぶりに会った人には「なんだか別人みたいだよ」と心配され・・・ 完全にヤラレてますね。
今年で26歳になるのですが、未だ「時が経つのが早い」という感覚を持ったことがありません。泥の中を掻き分けながら、一歩一歩、牛のように過ぎ行く日々よ。病的です。俺、死ぬんじゃねーか?
しかし私は「ド」が付くマゾヒストなので、最高です、この状況。
そう、私という人間は、自分を追い込むことに長けています。それが唯一の長所といってもいいくらい。
この状況、この追い込まれ方、これこそ私の俳優修業! 苦しめば苦しむほど感じちゃう! さあこい、苦しみ、もっと私を感じさせてごらん!!! おーっほっほっほっほ!!!
きもっ。
とんでもない女が入団してしまいました。
なぜ私が俳優をやるのかと申しますと、俳優をやることが私の最大の苦痛であるからなのかもしれません。
俳優というのは、目に見えないものを目に見えるものにする“技術者”なのだと個人的には思っておりまして。
しかしながら「目に見えてほしくないもの」というのもこの世にはありますよね。あるいは、「見えているけれども見えていないようにしているもの」。
具体的に例を挙げれば、どこどこで紛争が起こりましたとか、そういったニュース情報。もっと身近な例えであれば、最近母親とギクシャクしているのだけど何となく放っておいているとか、そういった日常生活においてスルーしているものたち。
そういった「見えないもの」たちをわざわざ掘り起こして、全身で感じて、ひたすら心の汗をかき続ける。そして多くの方々に、一緒に心の汗をかいていただこうという。
ここまでくると一周回ってマゾヒストというよりサディストか。
しかし人間にはそういったものがおおいに必要なのだと、私は信じております。
全てを失い丸裸になったとき、最後に私たちに残されるものは、その心の汗をきちんとかいたかどうかという実感のみです。
自分を感じること、他人を感じること。
感じること、感じること、感じることを、ひたすらに。
「皆さんと一緒に、これからいっぱい感じ続けられれば」
私はそうありたいと願う俳優であります。
話を戻せば、苦痛というのは、「感じる」というジャンルの中でもかなりビビットな方だと思うのですよね。
感じやすい、言い換えれば、手につかみやすい。私は、だからそれを何かしらの取っ掛かりにしているのか・・・ と、こんなところで自己分析。
どんな業種で生きていくにしても同じだと思いますが、私は私なりの方法でやっていくしかない。私なりの方法で、ドMの道を貫いていこうと思います。
このおしゃべりな若輩者、どうか厳しい目で見守ってやってください。
今後ともよろしくお願いいたします。
鹿沼玲奈