稽古場日誌
こんにちは、三井です。
嘘っぽい演技というものがあります。
オーバーリアクション、無駄な動きが多い、兎に角喋る、他人にベタベタ触る、など症状は様々あります。
このワークショップでも、前々回の《ショート・ストーリーズ》(寸劇)作りの時にそういう方が続出しました。どうすれば改善出来るのでしょうか?
原因の一つに、演じている身体に説得力がないことが挙げられます。
現実の世界では、人は何らかの目的や状態があり、それが幾つも重なって存在しています。
演ずる場合、その目的や状態が抜け落ちているか、あっても一つしか設定してない場合が多い。
例えば、マンションのゴミ捨て場で一人が掃除しているところへ別の主婦が現れるという設定の場合、後から現れた主婦は何故そのタイミングでその場所に来たのかを考えなくてはいけません。たまたま通りかかったのか、うわさ話をしたくてわざわざ来たのか、によって身体や声のニュアンスが全然違います。
その他にも人間関係、時間帯、季節など考えなくてはならないことは山ほどあります。
今日は「実の伴った身体」を探す1日でした。
まずこの前の映像を観ながら、一人一人成立しているかどうかを丁寧に検証します。
講師の小笠原が、「○○さんの鞄の中を覗く動作は理由がはっきりしていませんね」とか「□□さんは手持ち無沙汰で相手役に触ってしまいましたね」など具体的に指摘したことで、違いを感じていただきました。
その後スローで歩く《歩行》やストップモーション《二拍子》を色々な感情を設定してやってみて、新しい《ショート・ストーリーズ》を作りました。
限られた時間の中で二回も発表し、お陰で皆さん、説得力のある演技がどんなものか見えてきたようです。
何気ないシーンでも、「実の伴った身体」があると、人間関係や感情、描かれていない前後の時間など、想像力をかりたてられます。
こうなってくると、今度は内容にこだわりたくなります。
せっかく集まったのですから、このメンバーならではの視点で、今の社会の縮図を見せていただきたい!
そのためにはもっとお互いを晒け出さないと・・・、という理由にかこつけ、その日は有志で居酒屋へ繰り出したのでした。
三井穂高