稽古場日誌
今年もやってきました、板橋区立文化会館主催「小学生のための夏休みワークショップ」。
1年生から6年生、総勢22名のメンバーと一緒に3日間に渡り、《山の手メソッド》を用いたプログラムをおこないます。日常的な動きをもとに作り出す創作的ダンス《ルパム》と、日常的に起こりうるできごとからつくる寸劇《ショート ・ストーリーズ》(通称:S・S)をチームに分かれて創作しました。チームは、1,2年生2チーム、3,4年生2チーム、5,6年生1チームの計5チーム。最終日には、チームで創作した作品を披露する、保護者の方向けの発表会も行いました。
《ルパム》の創作では、“夏”から思い浮かぶキーワードを子どもたちからあげてもらい、それを基に身体を動かしながら、ダンスを創作します。私が担当した1,2年生のチームは“扇風機”と“旅行”というキーワードから、オリジナルの振りをつくりました。
途中にセリフを入れるという案も出て、“旅行”の《ルパム》では「しゅっぱーつ!」「着いたー!」と子どもたちの声がダンスを盛り上げていました。もちろん他チームも負けてはいませ ん。お化け屋敷やスイカ割り、海などのテーマでユニークなオリジナルダンスが創作されていました。《ルパム》の最後にオチがついていたり、高学年チームではジェットコースターの動きを乗っている人が動くのではなく、まわりの人が動くことで表現するなど高度な表現も出ていました。
《S・S》のテーマは“仲直りの風景”。普段は避けて通ってしまいがちな人間関係のトラブルと仲直りまでの過程を子どもたち自身が等身大の自分たちを通して考え、寸劇を創作します。時間や場所など、シュチュエーションを決め、動きながら、自分が感じたことをセリフにしていきます。
私が担当したチームは“スカートめくり”の場面を演じることになりました。子どもたちが決めた キーワードですが、いざ役を決める時になると“スカートめくり”をする人がなかなか決まりません。劇中とはいえ、悪いことをする役は演じたくない、という思いがあったようです。うそのことを本当のように演じることが演劇のおもしろさ、という話をする中で、引き受けてくれる子が出てきました。
舞台上に出てきていない時間にも、何をしているのか、他の役の人とどんな話をしているのかなどを子どもたち自身が話し合って決め、舞台上に出る前から演技をしている姿が見られ、決められたセリフを言うということではなく、その空間、その時間を想像し、生きようとしているのだと感じました。楽しそうに何度も稽古する姿が印象的で、演劇のおもしろさを感じてもらえたのではないかと思い ます。
最終日の発表会では各チームが《ルパム》、《S・S》を発表した後、子どもと保護者の方が向かい合って、感想をきき合いました。保護者の方からよかったところ、印象的だった作品、興味深かったことなどを子どもたちに語っていただきました。子どもたちも参加しての感想や発表会で思ったことなど、各々発表してもらいました。
保護者の方からは「子どもたちから出てきたもので、このような作品ができるのですね。」というお声もいただき、子どもたちの普段とはちがう一面を垣間見ていただけたのではないかと思います。
感想を語る様子やアンケートから多くの子どもたちが楽しんで参加してくれたことが伝わってきました。また3日間の創作を通して、人間関係の輪も広がったようです。最後には会場の至る所で、記念撮影が行われていました。
3日間という短い期間ではありましたが、最初は緊張からか表情が硬かった子どもが日を追うごとに笑顔が増えていったり、チーム内で言い合いになり、《S・S》が出来上がってしまいそうな場面があったりといろいろなドラマがありました。楽しいばかりではなかった面もあったかもしれませんが、そのひとつひとつが子どもたちにとって、“何か”を感じるきっかけになったと信じています。
最後の挨拶を終え、解散した後に同じチームで3日間過ごした子が駆け寄ってきてくれました。そして、「またいつか会おうね。」と言って笑顔で去っていきました。
また子どもたちに再会できる機会を楽しみに、私自身もこの3日間で得たことを大切にし、今後の演劇活動に生かしていけたらと思います。
武藤知佳