稽古場日誌
タイタス・アンドロニカス/女殺油地獄 小笠原くみこ 2015/09/18
シェイクスピア作品には、「悲劇」「喜劇」「史劇」「問題劇」「ロマンス劇」とジャンル分けされるように、近松作品にも区分があります。
書いた本人が区分したわけではなく、後世の研究者によって分けられているので、人によって分け方は事なりますが。
近松作品には、「時代物」と「世話物」に大きく分かれていまして、今回私たちが上演する『女殺油地獄』は「世話物」のジャンルと言われています。
「世話物」には、さらにいくつか区分があり、「心中物」「姦通物」などがありまして、この機会にいくつか読んでみることに。
全部読破できたわけではないですが、全部の作品が面白いわけではないのが正直なところ。
だいたいが、物語の最後に、主人公らが丸く収まるようにはできていないことが多く、「心中物」ですと、そのテーマ通り、主人公の男女二人の心中が描かれているのですが、そこへ向かうプ ロセス、主人公らの葛藤状況が丁寧に描かれているかどうかが、面白いと感じるかのポイントだと感じます。
名作と言われ、現在でも歌舞伎や文楽でよくおこなわれる演目は、そういう要素があるからなのではないかなと思いました。
さて。我々が上演する『女殺油地獄』。
まず感じるのは、タイトルから臭い立つ、怪しさとエロティックさ。
皆さん、知っていますか。
この話は、一人のお坊ちゃん成人男子が、近所の人妻を殺す話なんですが、男女の恋物語は描かれておらず、そういう意味のエロはないのです。
近松作品の中でも、この作品はジャンル分けしにくいようで、ちょっと異質扱いされることが多いようです。
そういう意味で、何か特別なものを感じます。
お話の筋は難しくはないけれど、何が言いたい作品なんだろう?
と考え始めると、我々は頭が痛いのです。
11月に上演するまでに、『女殺油地獄』(現代語訳が出版されているようなので、そちらを読むと分かりやすいです!)はもちろんのこと、もしお時間ありましたら、オススメしたい作品は「堀川波鼓」(ほりかわなみのつづみ)という、「姦通物」の作品をぜひ読んでみてください。
エロと正義と義理と情けなどなどが盛り込まれた作品です。
小笠原くみこ