稽古場日誌

タイタス・アンドロニカス/女殺油地獄 髙坂 祥平 2015/10/24

思わず笑っちゃう江戸時代

二本立て公演の本番まで一ヶ月を切りました。「タイタス・アンドロニカス」は、再演。ある程度、形はできている。大変なのは、新作の「女殺油地獄」
新しい何かを掴んだと思っては、捨てる。暗闇の中を、手探りで進んでいるような日々の連続。

「女殺油地獄」は、近松門左衛門が書いた江戸時代のお話。
当然だけど、江戸時代の人間の感覚っていうのは、現代とまるっきり違う。まず時間の捉え方から違う。時計が流通していなかったから、人々は、太陽の位置だったり、お寺の鳴らす鐘の音で時間を読んだ。科学が今より進歩していない分、当たり前のように信じられていたものが大分違うのだ。

作中には、山上詣りから若者たちが帰って来るシーンがある。当時の近畿地方では、女は機織りができて女と言われ、男は山上詣りをしていないと男でないと言われた。
奈良県南部に位置する大峰山(おおみねさん)。その一角にある女人禁制の山上ヶ岳に登ることが、男として認められるための大切な儀式だった。13歳になると山上詣りの先輩が連れて行ってくれる。ちなみにこの山、今でも結界があり、女性は立ち入れない。どうしても登りたい人は、バレないように男装するんだって。

現在とはまるで違うこの時代のことを調べるのは、楽しい。時が経つのも忘れ、没頭できる。当時の新しい情報を知った上で、稽古に臨むと、いつもとはまた違った答えが生まれてきたりもする。見えなかったものが見えてくる瞬間は、嬉しい。

本番まであと少し。
当時の不思議な感覚が少しでも多くの方に届けられたらなぁと思います。劇場でお会いしましょう。

高坂祥平

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『タイタス・アンドロニカス』『女殺油地獄』公演情報
https://www.yamanote-j.org/performance/7207.html

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