稽古場日誌

背中が動かない・・・。

山の手事情社独自の表現に《ルパム》と呼ばれるものがある。現代日本人の日常的な動きをもとに俳優が創作するダンスのことで、今回の「女殺油地獄」にも用いられる。

5~6人のチームに分かれ、それぞれ「殺意の芽生え」等の作品のテーマを元に創作する。大発表会を経て、面白かったものは本番に使われる。

一から創作する作業も大変だが、いざ舞台に載せるために洗練させる作業はさらに、繊細さかつ強いエネルギーを要求される。

大体「この人の身体が面白いね、みんなで真似しよう!」という流れになるのだが、この「真似る」という作業がとにかく苦手なのだと今回再認識。
必死に先輩の身体を見て、ニュアンスを感じて真似ようとするのだが、どうにも自分の身体のクセを消しきれない。
20数年の間、硬く硬く凝り固まった己のクセ。それは武器になることもあるが、様々な表現をする上では弊害になることも多い。
僕の場合、背中が硬く、真似したいニュアンスに中々近づけない。
身体感覚を磨くのは時間がかかるけど、訓練すれば絶対変わるよ! と先輩方に叱咤激励され稽古に臨む日々だ。
劇団員になっての初舞台では結局真似しきれず《ルパム》メンバーから外された。その苦い思いをまた噛みしめるわけにはいかない。

中々融通の効かない我が背中よ、どうかその頑なな心を解放し、他人の生理感覚を受け入れてくれたまえ。

田中信介

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『タイタス・アンドロニカス』『女殺油地獄』公演情報
https://www.yamanote-j.org/performance/7207.html

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