稽古場日誌
「私は将来凄い人になるんだ」
衝動的にそう思ったのは、まだ演劇とも出会ってない高校を卒業する少し前の話。
学校の文集だったか何だったかの「将来Bigになりそうな人ランキング」で1位に輝いたのがきっかけだったと思う。
思えばこれが始まりだったのかもしれない。
その後色々あって、小学校の先生になるとか、消防士になりたいとか、音響さんになるべきだとか……紆余曲折したのちに、衝動的に演劇の短大に入学した。
山の手事情社の研修生になろうと思ったのも、日暮里d-倉庫で公演された『にごりえ』を観て、またも衝動的に「私はここに入団するんだ」と思ったのがきっかけだ。
そして今でも「凄い人になる！」という妄想に取り憑かれている。
凄い人になるとしたら、そもそも演劇を選んだ事がミスチョイスだったかもしれないと我ながら思う時もあるが、衝動で始めてしまったし、後悔していないし、現に日々の稽古のお陰？ でバイトの営業成績も上がって行くので、遠回りだけど間違いではないと思っている。
とは言え、普段は頭だけで考えすぎて動けなくなってしまう私。いつも選択肢を狭めてしまうふしがある。
だからなのか、衝動に任せて物事を決めた時ほど後悔しない。そして演劇は衝動的に行動する事を許してくれる。
私は沢山の衝動の繰り返しの果てに、いまだ演劇を続けているのだと思う。
そしてそれを許してくれる家族にも感謝しながら、また「凄い人になる」ために、次の衝動を待っている。その道のりはまだまだ長い。
渡辺可奈子
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