稽古場日誌
お芝居を見に行くとき、何で情報を得るか。今はインターネットで探すことが多くなりましたが、以前は「ぴあ」や「シアターガイド」といった情報誌がありました。あとはチラシですね。
私が劇団に入った2002年ごろは、まだまだチラシ全盛期、ダイレクトメールで郵送したり、他団体の公演で配布してもらったりして、チラシをお客様にお届けしていました。
ダイレクトメールの作成は、劇団員が稽古場に集合し、ラジオを聞いたり、普段は聞けない先輩の話を聞いたりしながら作業を進めます。そこで知った『CHARGE!』(1991年)のチラシの秘密。このチラシには劇団員が膨大な時間をかけて一枚一枚手作業でナンバリングを施し、ひとつとして同じものはないと聞きました。未だに全何枚だったのか聞けていませんが、残っているチラシには「66620」が押されています。きっとそれはお客様には伝えないまま配布されたのだと思います。見つけられたらラッキー! 大変な作業だけど、秘密に気づくお客様のことを想像したら、ワクワクしかなかったんじゃないかと思います。
公演をおこなう上でチラシはお客様が最初に出逢うもので、公演の表紙とも言われるほどです。チラシと出逢った瞬間から、観劇に向けて期待と興奮の日々を過ごしていただけるような、そんな表紙にこれからもこだわり続けたいです。
他団体の公演で配布してもらうには、折り込み作業というものが発生します。劇場に出向き、公演団体が仕込みをしている時間にロビーの片隅でおこないます。関東と関西ではやり方が違うようで、関東では、束になっているチラシに、それぞれのチラシを各自で挟み込んでいくパターンが多いです。
作業としては自分たちのチラシを挟み込むだけなのですが、新人の時は緊張の現場でした。前後の他の団体の方がベテランの時は地獄です。特に後の人が早い場合は待たせることになり、そのプレッシャーときたら。「ごめんなさい」と思いながら、早い人の作業を見て、この指を使うのか。この向きが良いんだ。あの道具はなんだ? と次に活かせるように技術を盗み、とにかく必死でした。慣れてくると、前後の見ず知らずの団体の方と話す余裕も出てきて、そのときに聞ける他団体の様子や、最近観たお芝居の話は、今思えば贅沢な時間でした。
時代の変化とともに公演を宣伝する主な媒体は紙からインターネットに変わりつつありますが、チラシ文化から受け取ったものが今の私を形成していると思うと、無くしたくないなと思ったりします。
もう一つ、変化をしているものと言えばチケットでしょうか。以前は紙チケットが主流でしたが最近は電子チケットが増えています。そんな中、山の手事情社は紙チケットを続けています。しかもプレイガイドが発行する文字のみのチケットではなくデザインチケットで。手間暇はかかりますが、チラシと同じようにチケットも作品の一部と感じていただけたらという想いがあります。チラシに出逢い、チケットを受け取り、お芝居を観て、チラシとチケットで余韻を楽しむ。いかがですか?
山の手事情社は創立40周年を迎えました。節目の年は過去の資料に触れる機会が多くなります。今回初めて旗揚げ当時のチケットを目にし、デザインや形状に凝ったものが作成されていて、思わず手元に残しておきたくなるようなものでした。そういうものを見ると益々デザインチケットへのこだわりが強くなります。時代の変化と付き合い、利便性も考えながら、山の手事情社らしさを続けていきたいと思います。
『オセロー』『マクベス』もオリジナルのデザインチケットを作成しました。
ご来場のみなさま、どうぞ楽しみお待ちください。
ご観劇後はしおりなどにして、チラシとともに少しの間でもお手元に置いていただけると幸いです。
福冨はつみ
これまでの公演チラシはこちら ⇒ チラシギャラリー
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劇団 山の手事情社 二本立て公演
『オセロー』『マクベス』
日時=2025年2月21日(金)~25日(火)
会場=シアター風姿花伝
詳細は こちら をご覧ください。