稽古場日誌

ワークショップ 高島 領也 2026/02/02

島根県・大田区ワークショップリポート

私たちは芸術家派遣事業で、2025年8月に島根県立吉賀高校、10月にこちらも島根県の江津市立江津東小学校と浜田市立国府小学校に行き、11月と12月には地元大田区の大田区立六郷中学校と大田区立大森第四小学校に出張講座に行ってまいりました。

この事業は学校へアーティストが派遣され、子供たちが芸術を観たり体験したりする事業です。
前半1時間のワークショップと後半30分で『走れメロス』のお芝居を鑑賞してもらいます。

ワークショップの部分では始めに身体全体を手で叩いて身体を温め、その後《左右非対称の動き》をします。右腕は3拍子で動かし左腕は2拍子で動かすといったものです。
すぐにコツを掴む子もいれば、思ったように出来ない事を笑いながらむしろ楽しんでいる子、全くやるそぶりを見せない子、様々いますが、印象的だったのは私の目の前の子が出来ずにもうダメだと言わんばかりに涙ぐんでいる子です。
かつて小学生だった自分を見ているようで、懐かしいような、もどかしいような気持ちになりました。しかし彼は投げ出すそぶりはしても、結局最後まで諦めない。その子は結局自分の身体が思うように動いてくれず、悔しいままメニューを終えました。演劇ではそんな悔しい気持ちや情けない気持ちを振り返るのが大切です。その感情の積み重ねが後の自分の糧になるのです。この経験もいつかその子の大切な経験の一部になってくれたらと思いました。

そのあとはスローモーションで歩く《歩行》や、手足を大の字に開いたポーズを一瞬でとる《平行》と、喜怒哀楽といった感情を表すポーズをとる《二拍子》を体験してもらいました。
俳優がまずこれらのメニューの手本を見せてから「これやってみたい人!!」と声をかけると、始めは周りを気にして、「お前行けよ」「やだよやだよ」と声が聞こえてきて、ぽつりぽつりと十数人が舞台上に来てくれる学校もあれば、時には半数以上の人が舞台上に来てくれる学校もあります。やってみたい気持ちと恥ずかしい気持ちの葛藤がそれぞれに見えて、この心揺れる時間はどの学校でも面白いものです。

そのあと10分程度の休憩を挟むのですが、島根県の小学校ではどちらの学校も子どもたちの間でダンスが流行っているらしく、暇ができると皆その見慣れないダンスを踊っていました。調べてみると「ナルトダンス」というネットで話題のダンスらしく、私の時代と異なり、最近の子はネットのブームに敏感なのだなあと時代の変化を感じました。

ワークショップの後に『走れメロス』を観劇してもらいました。短い小作品ですが、子どもたちも先生も集中して観てくれます。
いつもは学校の生徒会長などが感想を代表して言ってくれるのですが、六郷中学校では演劇部の人たちが最後に感想を言ってくれました。「前半で教えてもらったワークショップの内容が、メロスの劇に全部使われていて、こういう演じ方もあるのかと気づかされた」「劇の中の表現で持ち上げた椅子を床に置く動きにもこだわりがあるのが分かり、一つ一つの細かな動きに意味があって面白かった」と言ってくれました。
表現している側としては観客には気づいてもらえなくてもいいような細部の表現でしたが、繊細な表現さえも余すところなく集中して観てくれて、俳優としてなんとも嬉しい感想をいただけました。

この事業が今後、演劇に触れるきっかけになれば幸いです。

高島領也

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