稽古場日誌

燦燦と淡淡と研修生 倉品 淳子 2016/02/29

演出の斉木和洋について

斉木という男は、変わっている。
彼は「オイディプス王」上演のためのブレインストーミングで「舞台上で豚を殺してはどうか?」という提案をした。
劇団員は爆笑したが、本人はいたって真面目なようだった。
“殺す”で思い出したが、稽古場で大きなスズメバチが出た時、彼は素手でこれを握りつぶした。
男性にありがちな、かっこつけやヒロイズムではなく、ただ、自然に蜂に運命としての死を受け入れさせるように。
彼の中では人間は特別な存在ではなく、豚も蜂も人間も、ただ命あるものとして並列に存在しているように見える。
斉木はそういう冷淡な暖かさを持った男だと思う。

斉木和洋の最初の演出作品、タイトルは「デッドファーザー」。
過激なタイトルだ。
残念ながら私は見ることができなかったが、とても評判がよく、彼の感性の煌きを感じさせたものだったらしい。
さて、今回は2度目の演出公演、先日すでに何度目かを数える通しを見た。
もちろん、まだまだだ。
だが、そこには、妥協のない俳優の中の深い暗闇を引きずり出す姿勢が感じられた。
俳優の隠していた暗闇を燦燦と照らそうというのか? 顔色一つ変えず蜂をひねり潰す時と同じように淡淡と。

彼の作品は乾いていて、現代的でかっこいい。
若い人たちの新しい感性の芝居を是非目撃してください。
悔しいくらい、おすすめです。

倉品淳子

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2015年度研修プログラム修了公演「燦燦と淡淡と」
日程=2016年3月10日(木)〜13日(日)
会場=シアターノルン
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