稽古場日誌

燦燦と淡淡と研修生 中川 佐織 2016/03/01

テンション

山の手事情社の研修生修了公演というのは、演出家も出演者も毎年違う。
シーンは研修生(役者)から出た、アイディアやネタがいくつも散りばめられて構成される。
その為、出来上がるまで一概に「今回の作品は、こういうものだ!」とは説明しにくい。
ただ、今度の演出家は、私が研修生時代のエチューダー(講師)である、斉木さんが担当する。
あれ? じゃぁ、私、見どころポイントが推理できるのでは? と、あの頃を振り返ってみると、筋トレと筋トレと筋トレばかりの日々。
河原を走って足腰鍛え、稽古場では「うぅわあぁーーー!!!」と叫んでいた事しか思い出せない・・・。
そんな、馬鹿な!?
いや、でも、今年の子達は違うようだ。
稽古場をのぞいてみると、なるほど、MACユーザーが多い。
そこここで、ノートパソコンや、iPhoneがピカピカと画面を明るく照らし、デジタル機器を用いてメモをとっている。
私の頃は、紙とペンだったのに・・・。
むむむ! 自炊をする子も多いようだ。食べ物は質よりも量では、無いのか??
そして、一人を除けば、皆、20代。若い。若すぎる。
演技も、皆、器用だ・・・。人当たりも、なんかいいぞ・・・。
私の頃とは、何もかも大違い。だが、何かが足りない。
《漫才》、《ショート・ストーリーズ》、《ものまね》と、
様々なエチュードやシーン作りを器用にこなしているが、何かが足りない?
なんかこう、グワッとした感じのグイグイしている、はっ、そうか! テンションが足りないんだ! テンションが!!!

斉木さん「テンションについて考えてきて」
研修生「なんなんですか? テンションって?」
私「思考や言葉に惑わされるな!!!」

得体のしれない、訳の分からない、付属の説明なんて必要の無い。
自分も他人も現実も虚構の世界もなんか繋がると信じてつき動く力。
私があの1年で学んだ、演劇の初めての武器は『テンション』だった。
思い出した、思い出した。
斉木さんから学んだことは、そういうものだ。
5年越しに、やっと気づいた。

ここ数日、今年の研修生達からも少しずつそれぞれの『テンション』が立ち上がり、ぶつかり合いだして来ている。
『テンション』ってなんなのか?
それを観に、ぜひ、3月シアターノルンにお越しいただければと思います。

中川佐織

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2015年度研修プログラム修了公演「燦燦と淡淡と」
日程=2016年3月10日(木)〜13日(日)
会場=シアターノルン
詳細はこちらをご覧ください。

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