稽古場日誌

ワークショップ 名越 未央 2016/11/10

色んな世代でえんげきワークショップ リポート1

「色んな世代でえんげきワークショップ」、いよいよスタートしました。
中学生から70歳代の方まで、集まったのはまさに色んな世代の19名の方々。10月~12月の全7回にわたって、多彩なメニューに挑戦していきます。

これだけ世代が離れていると、ちょっとしたストレッチやゲームなどからして、それぞれ感じる難易度が違ってしまいます。「自分と同じくらいの世代の方はいるだろうか」「足を引っ張ったりしないか」「演劇なんて自分にできるのだろうか」と、おそるおそる参加した方も多いご様子。私自身、3世代ほども離れた方たちが同じメニューに取り組んでみなさんが満足できるだろうか… といつも以上に緊張気味でした。
しかし、そんな不安もなんのその。これまで2回のワークショップを終えて、改めて実感しました。
スポーツや仕事では難しい、色んな世代が一緒になって楽しむということが、演劇だからこそできるのです。

先日、第2回目のテーマは「ことばの創作」。
この日の最後のメニューとして、みんなで勝手に作ったでたらめな言葉を、「国」「食べ物」「有名人」などに当てはめ、2人で語る、ということにチャレンジしました。打ち合わせする時間は一切なし。「えー難しい…」と一瞬戸惑いを見せながらも、舞台に立ったらみなさん好き勝手なことを言い始めます。

たとえば“のまみみ”という「国」について…
「私まだ“のまみみ”には行ったことないんだよね~」
「そりゃそうだよ、“のまみみ”ってこないだ日本から独立したばかりで、まだ簡単には入国できないらしいよ」

あるいは“やごゆど”という「動物」について…
「アマゾンに住んでる友達が“やごゆど”を飼ってて、その“やごゆど”の口の中に生えるきのこが一個20万円するんだけど、そのきのこをたくさん送ってきてくれたんだよね」
「すごいじゃん! ネットで売ろうよ」
「でもあれ、すっごいまずかったよ。近所に配ったら変な目で見られてさぁ」

こうやって、ありもしない国や動物のことを2~3分かけてしどろもどろ2人で語っていくうち、徐々に姿形が浮かびあがってきます。ことばを使って、ないものを創造していく力が私たちにはあるのです。もちろん、なかなかスムーズに言葉は出てきません。でも、苦し紛れの姿もおもしろくて見ている人は笑うし、かと思ったらいきなり堂々と言い切ってみんなのツッコミを誘ったり。自分の話に笑ってくれることで、語り手はもっと調子に乗って、更に色んな発想が飛び出してきます。本人たちでさえ思いもよらなかっただろう突拍子もない話がどんどん出て来て、大いに盛り上がりました。

演劇ワークショップでは、若いほうがいい、ベテランのほうがいい、演劇経験があるほうがいい、などと決まったことはなにも言えません。言葉や身体を、上手に器用にうまく使って場を沸かせる人もいれば、混乱してしどろもどろの必死な姿がおもしろくて、みんなを爆笑させる人もいる。思わぬところでおもしろい瞬間が生まれていくのです。
そしてそれが、ふだん触れ合わない世代であればよけいに、みんなの驚きと興奮が増すようなのです。
自分の孫と同い年の子が、すごい発想力でぺらぺらと達者にしゃべっている…! 
自分のおかあさんぐらいの世代の人が、変な声を出して変なポーズをしている…! 
そのことに笑ったり、感心したり、悔しくなったりして、刺激を受けているご様子。大人や子供に対しての見え方まで変わってきそうです。
「色んな世代のえんげきワークショップ」、まだまだ、たくさんの驚きと興奮が見られそうな予感。これからも楽しみです。

名越未央

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