稽古場日誌

オイディプス@Tokyo 斉木 和洋 2016/12/12

診察台でとらわれて

作中「父を殺し、母と交わり子をなす」とオイディプスが授けられる神託は、ただの神話なのだろうか。現代の私たちも実は依然として強固な神託に縛られているのではないか。劇団員が自分にとっての神託を語ります。
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歯が痛い。
今回、与えられたテーマは、「お前も何かにとらわれている」ということなのだが、
歯が痛くて思考に呂律が回らない。
れろれろれろ。
歯医者だな・・・。
と思うのだが・・・。
ふとやつの顔が浮かぶ。
あそこの歯医者は手強いのだ・・・。
仕方ない。
予約を入れた。

病院とは相性が悪いのだ。
数日高熱が続き、仕方なく病院にいったときは、
「原因はわかりませんが、〇〇の数値が異常ですね。薬はこれでいっときますか?」
と言われ。
ここまでタメ口じゃなかったかもしれないが、俺の記憶では、こうなっている。
○○は忘れた。
いっといた薬はなぜだか効いた。

そして、くだんの歯医者である。
医「痛かったら、手をあげてくださいね」
水蒸気を口腔内に吹きかけられる。
多少しみるなと思いつつも無反応な俺。
医者は手を休め。
医「しみましたか?」
俺「多少」
医「もーう! しみたら手をあげてくださいよ。もう何やってんの?」
俺「すみません。もう一回お願いします(笑)」
茶目っ気を発揮する俺。
医「もーう!  時間を置かないと(怒)」
怒られる俺。
待つこと数十秒。
今度こそはと、全身性感帯になったつもりで感覚を研ぎ澄ます。
俺「はえ」(挙手)びしっ!
俺「はえ」(挙手)びしっ!
俺「はえ」(挙手)びしっ!
医「これはあれだ。虫歯じゃなくて歯が欠損してるんだよ・・・」
俺「ふぁがふが」
医「歯が削れてね」
俺「むひばらないんれすか?」
医「そうだよ。前に来た時に言ったでしょ。自業自得だよ。とりあえず言われたところやったからね。もうしみないから」
仰向けに寝かされ、ライトに照らされ、口には器具を突っ込まれ、話す言葉もれろれろだ。
歯医者のインフォームドコンセントは、どこもこんな羞恥プレイなのか?
せめて、診察台をあげて、この口のなかに突っ込まれた器具を取り除いてから説明して欲しい。
そして、人のことは言えないが、このトリッキーなお人柄も何とかならんものか。

・・・自業自得か。
そうか俺が悪いのか。
確かに前回治療途中で行かなくなったのは俺だ。
身体が発する警告を無視し、罰を受けたのだ。
悪いの俺だったんだー。
つまりは、これは、街なかに転がるちょっとしたオイディプスかー。
とらわれているよ診察台に。

そして、帰宅。
冷たい水を一気に飲む。
しみるー。
しみるやないかーい。
どこをいじってくれたんだーい。
しかし、今日は時間がない。
明日、もういちど行くかと思いつつ、観劇のため、急いで江戸川橋へ。
帰宅、就寝そして、起床。
さて、予約をいれるか。
ん?
休診日やないかーい。

というわけで、最近は歯の痛みにとらわれています。

斉木和洋

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若手公演「オイディプス@Tokyo」
2017年2月23日(木)~26日(日)
すみだパークスタジオ倉
公演情報はこちら

Oedipus@Tokyo

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