稽古場日誌
オイディプス@Tokyo 名越 未央 2017/01/13
作中「父を殺し、母と交わり子をなす」とオイディプスが授けられる神託は、ただの神話なのだろうか。現代の私たちも実は依然として強固な神託に縛られているのではないか。劇団員が自分にとっての神託を語ります。
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オイディプスは、「おまえは恐ろしい悲劇を引き起こすダメ人間だ」というネガティブ神託に恐れおののき、一生苦しみ続けた。
けれど私は思う。
「おまえは素晴らしい人間になる」というポジティブ神託だって、めちゃくちゃ恐ろしいじゃないか。
私の人生は、そういう神託に支配されている気がしてならない。
小学生の私、美術館でルノワールの絵をみる。
「すごい。きれい。私もこんなの描きたい!」
するとそこへ、私のなかに響く天の声。
「あんたもがんばればルノワールになれるんじゃない?」
その気になった私は絵を描きまくり、いくつかのコンクールで賞をとる。
いい気になって美術系の学校に行きたいと願うも、そこまでの才能なんてなく、あえなく断念。
神託は実現されず、挫折を味わった。
またある日、安達祐実主演ドラマ「ガラスの仮面」に釘付けになる。
「すごい。かっこいい。わたしも北島マヤになりたい!」
そしてまたもや降される恐ろしいお告げ。
「あんたもがんばればすごい俳優になれるかもね」
その神託は長く私のなかに居座り続け、今に至るわけである。
そしていま、またもや私は新たな神託を授かった。
「がんばれば、めちゃくちゃおもしろい『オイディプス@Tokyo』が創れるんじゃない?」
この神託は、なんとしても実現させなければならぬ。
今日も私は、神託との闘いに明け暮れる。
名越未央
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若手公演「オイディプス@Tokyo」
2017年2月23日(木)~26日(日)
すみだパークスタジオ倉
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