稽古場日誌

オイディプス@Tokyo 研修生 2017/02/20

山の手事情社のエネルギー

お久しぶりです。研修生の菅原有紗です。
数年前、山の手事情社の公演を初めて観たとき、「なんてエネルギッシュなんだ」と、圧倒された覚えがあります。
空気が圧縮されて濃密で、引力に引き寄せられるような感覚。
漠然とそう思っていました。
ですが、今回若手公演である『オイディプス@Tokyo』の稽古場を見学し、そのエネルギーがどう生まれているのかを感じてワクワクしました。

《四畳半》は人によってやり方が違うのですが、身体の複数箇所から相手にフォーカスをとる人もいるらしいです。
そのとったフォーカスを無くさないように、身体を動かすから変な動きになると。
なるほど! あの変な動きにはそういう理由があったのですね!
そのポーズがどう見えるのかという印象を研究して動いているのだと思っていました。
でもそれだけではない。
自分の中の感情と共に、相手との関係の取り方に重きを置いていることは、新しい発見でした。

それがわかって稽古を見てみると、なるほど。
俳優の身体と身体が空気中で繋がっているような感じがします。
だから相手が動くと同時に、その瞬間に生まれた感情で身体が動く、という影響の与え合いが起きているのかも。
影響を与えて、与えられて、の中で生まれてくる感情の揺さぶりが、私が感じていた「エネルギー」の正体かもしれない。
でも、もしかしてこれって、《四畳半》でなくても芝居には必要な感覚じゃないか?
私たち研修生の修了公演『Anniversary』でも、これが出来たら面白くなるんじゃないか?
欲が出ました。
こちらもどうぞよろしくお願い致します。

宣伝はさておき、そんなことを思っているとき、鳥肌の立つシーンがありました。
オイディプスの過去が明らかになってきて、オイディプスは自分の子供だと、妻のイオカステが確信するシーンでした。
イオカステがオイディプスの話を聞きながら虚空を見つめています。
すると、その視線の先に、オイディプスが足をパンっと出してきました。
その時、我が子を見殺しにしなければならなかった「あの時」のイオカステのヒリヒリとした痛みが鮮烈にありました。
私はそれまでオイディプスの苦悩ばかり見ていましたが、イオカステってこんなに辛かったんだ、と改めて感じて身震いしました。

おそらく、そういった心の叫びを見せようと、俳優たちは身体のフォーカスの取り方を毎回変えて、試しながら稽古しているのでしょう。
《四畳半》は完成していないんだそうです。
試していくのが醍醐味だからなのかな、と推測します。
これからどんどん試していって、先日の稽古とは全く違うものになっていくのでしょう。
本番にはどうなっているのか、とても楽しみでドキドキします。
是非とも、『オイディプス@Tokyo』にお立会いください。

菅原有紗

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