稽古場日誌

Anniversary 名越 未央 2017/03/06

「記念」の正しい取り扱い方

私の母は、園芸をこよなく愛している。
あらゆる花を育てては咲き乱れさせ、なにかにつけて記念樹を植える。

私の中学入学記念に植えられたソメイヨシノは、「みおちゃんザクラ」と名づけられ、大切に育てられた。
他の花々が見事に咲き誇るなか、「みおちゃんザクラ」はなかなか花を咲かせなかった。
なんとなく、パッとしない自分と重ね合わせて切ない気持ちになった。
でも何年もかけて、「みおちゃんザクラ」はどんどんどんどん大きくなり、やがて名越家に春を告げる立派な桜の木になった。
感慨もひとしおである。

ところがある日、

「大きくなりすぎて見晴らしが悪い、邪魔だ。」

と言い出した母によって(山の上に立つ我が家は景観が良かった)、「みおちゃんザクラ」はあっさりと根元からチェンソーで伐採されてしまった。
なんてことをするのだろう、この母は。
恨み言を言いたくなったが、でもその潔さはちょっとすごい、と思った。

「記念」は人生に感慨や彩りを与えるが、「いま」を邪魔しようものなら、潔く、容赦なく、バッサリと切り捨てるべきかもしれない。
これぞ「記念」の正しい取り扱い方なのかも。
でも人間は、なかなかそんな簡単にはわりきれないんだよなぁ、とも思うけど。

今年の研修生修了公演『Anniversary』でも、そんな悲喜こもごもぎゅっと濃縮した人間模様があぶり出されるのではないかと期待している。

名越未央

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2016年度研修プログラム修了公演「Anniversary」
日程:2017年3月23日(木)~26日
会場:シアターノルン
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2017年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
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■年間ワークショップ参加者体験談
■年間ワークショップカリキュラム

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