稽古場日誌

Anniversary 河合 達也 2017/03/07

抜いた「親知らず」

僕にとっての「Anniversary」=記念日とは、と考えても思い当たるのは誕生日くらいだ。
その誕生日にしても、「まぁ今日誕生日だし、ケーキでも買って食べるか」程度の存在。
誕生日でなくても食べたくなればケーキくらい買うのだけれど。

思えば何かの記念に残しておくとか、とっておく、という習慣が無い。
どこかへ観光に行ってせっかくだからと何かを買ったとしても、家に持ち帰って袋のままその辺へ放り投げて、1週間もたてば存在すら忘れてゴミと一緒になっていることだろう。
別に記念なんて必要無いとすら思う。

ただ、今までで残しておきたいと思ったものが一つだけある。
それは「親知らず」だ。
小学生の頃の話だが、上あごの前歯の手前、口蓋の部分から小さな歯が生えてきて、何となく、それを抜いた時に捨てたくないなと思った。
生えてきた時にはびっくりして、舌先に何かが当る感触がもの凄く恐怖だった。
親の勧めで歯医者に行き、抜くことになったのだが、それがもう痛くて怖くて。
3本くらい麻酔を打ち、抜けやすいように歯の周りの肉を切って、医者と助手二人で色んな器具を口に突っ込まれて、ペンチみたいな器具で親知らずを引っ掴んで、ようやく抜けた親知らず。
トラウマになりそうなくらいとんでもない目に合ったにも関わらず、歯医者のおじさんに「これ、捨てときますね」と言われたとき、何故だか酷く動揺した。
それを感じ取ったのか、歯医者のおじさんが「とっておく?」と聞いてくれて、無言で頷いた、ということがあった。

今でも実家に残っているのかわからないが、あの時、抜いた親知らずを捨てることに動揺したのは、何故だろうか。

何かの記念に残しておきたいと思った様な気がするのだが……。

河合達也

**********

2016年度研修プログラム修了公演「Anniversary」
日程:2017年3月23日(木)~26日
会場:シアターノルン
詳細はこちら

2017年度研修プログラム「俳優になるための年間ワークショップ」
オーディション開催中
詳細はこちら
■年間ワークショップ参加者体験談
■年間ワークショップカリキュラム

稽古場日誌一覧へ