稽古場日誌

班女 中川 佐織 2017/06/18

恋と変貌

「出会う」って、いい響きですよね。

私もある人に出会ってから、7年間、好んで片思いをし続けていた時があります。
その人のことを考えるだけで、生きていられる。
どんなことも頑張れる。どこへだって出向く。
お金があれば、投資もする。
凄いですよね〜。ちょっと前のことです。
…気づけば、もういい年齢。
そんな私は、今回、花子役をメインに演らせていただきます。

三島由紀夫の「班女」の花子は、待つ女です。
出向くことはしません。
恋した男性に「また来る」と言われ、そのしるしに扇を交換しあい、男性と再会した時のことを考えて、毎日、毎日、待っています。
3年間待たされても、男への恨みつらみの台詞はないのです。そうして狂ってしまう。

どんないい男なんでしょうね?
いや、たとえいい男じゃなくても、恋をすると人は阿呆になってしまいます。
私の7年間は、恋に恋をしている状態というのでしょうか?
想える人がいるだけで、楽しいんですよね。
ところが、その楽しい時間には周期があって、ひとたび想いが牙を剥くと、一変。
急に変貌するわけです。
それ以外のことに頭が回らなくなり、人の約束は破り、浪費をし、四六時中相手のことを考え、ストーカーのように今何をしているのか嗅ぎ回る。
他のことが手につかなくなります。
後から考えれば、「何してんだ、お前」です。
付き合ってもいないのに、そんなことになるから酷いもんです。
大抵は、一生懸命寝て頭を冷やすか、具体的にその人から距離を取ることで、一旦治めようとします。
でも、この他人から見ても、「何してんだ、お前」 という状態が、ず〜っと続いたらいいと思っている女性って、実は多いんじゃないでしょうか?
私もその一人。

今回の大久保美智子の演出には、個人的に「変貌」もコンセプトに入っていると思ってます。
どんな恋でも愛でも、人は出会えば変貌する。
その変貌を、お魅せできるよう。
ぜひ、ご来場お待ちしております。

中川佐織

*******************

「班女」
2017年6月30日(金)~7月4日(火)
The 8th Gallery(エースギャラリー)
公演情報はこちらをご覧ください。
20170429_hanjo_omote

稽古場日誌一覧へ