稽古場日誌
山の手事情社のワークショップのメインメニュー《ショートストーリーズ》は、ストーリーもセリフも自分たちで考える寸劇だ。しかもほんの1時間ほどで創るのだから、大抵の子どもたちがびびる。
板橋の子どもたちも例のごとく不安顔。でもこの面々がすぐさま輝き出すのが、《ショートストーリーズ》のおもしろいところなのだ。
まずストーリーを決めるために、それぞれの体験談を話してもらう。今回のテーマは「楽しいことをしていたのに、急につまらなくなった話」。すると、みんな口々に最近あった楽しい出来事、腹が立った出来事などを嬉々としてしゃべるしゃべる。
私の担当したチームは、話し合って“牛乳じゃんけん”のお芝居にすることに決めた。
“牛乳じゃんけん”とは、給食の時に余った牛乳をじゃんけんで争奪するというもの。大人にしてみればくだらないかもしれないが、小学生にとっては超真剣勝負。勝てば天国負ければ地獄、その勝敗が1日の気分を左右するほどなのだという。
なかなかおもしろい題材だ。
彼らはまだ気づいていないだろうが、その感覚は小学生ならではのもの、今しかないとても貴重な瞬間を切り取っていたと思う。
勝って嬉しい・負けて悔しいという感情を、身体を大きく使って表現したり、ワークショップのメニューで体験したスローモーションの動きで表情豊かに給食を食べたり、日常生活ではやらないような動きに挑戦するのは難しく、四苦八苦しながらも夢中になって取り組んでいた。
他のチームもそれぞれ、小学生ならではの感覚でなかなかおもしろい作品を創っていた。
夏休みも終わり、また学校が始まる。今しかない日々を、一学期よりもほんの少し、感情豊かに表情豊かに過ごせるきっかけになっていればと思う。
名越未央