稽古場日誌

外部活動 佐々木 啓 2017/11/13

佐々木です、客演してきました。

皆様、こんにちは。俳優部の佐々木 啓です。
2017年も残すところあと僅か、いつの間にやら夏が終わり、秋が過ぎ去り、冬になってしまいました。灼熱地獄だった夏が遙か昔のようです。

夏と言えば今年の8月にワタクシ佐々木、俳優部の大先輩川村岳さんと共にバングラという演劇ユニットの『マクベス』に客演してまいりました。「今更報告かよ!」と言われてしまいそうですが、ご容赦くださいませ。またお暑い中お越しいただいた皆様、応援してくださった皆様、座組の皆様、本当にありがとうございました。

バングラという演劇ユニットは三村聡さんが立ち上げた団体です。三村さんは山の手事情社で長年主軸として活躍されたのち、現在はフリーとして活躍されている俳優さんです。
バングラというユニットを一言で表現すると“演劇アマゾン”ですね。三村さんによって集められた出身もキャリアも持ち味も違う俳優が闘い、共存する、そんな場所です。
キャストは三村さんを筆頭に川村さん、フリーのベテラン女優さん、フリーの21歳の女優さん、佐々木の5人。5人で『マクベス』って… 今更ですが凄いですね。

演目が『マクベス』というのも大変でした。シェイクスピアの代表作の一つですし、言葉の持つ力に圧倒されてしまいます。僕らの世界では数文字で済むところを何行もかけて書いていたり、現代ではあまり使われない格調高い言葉が出てきたり、あと台詞量が単純に膨大だったりするので、言葉(台詞)を発するだけで精一杯になってしまい、言葉(台詞)に込めなければいけないニュアンス(色合い、音の調子、俳優が解釈した意味、感情)が希薄になってしまう、そんな台詞に踊らされている状態に陥りやすいのもシェイクスピア劇の難しいところの一つだと思います。僕自身、今回は本当に台詞に踊らされました。

稽古自体は今年の4月から始まりました。
“演劇アマゾン”での『マクベス』の創作、濃厚な4ヶ月でした。
ただでさえ、難物の『マクベス』と平行して劇団の稽古もしていたので本当にハードでしたが、辛くも楽しい創作期間でした。
読み合わせ一つでも今まで扱ったことのない高度な言葉、文量に悪戦苦闘しました。先程書きましたが台詞に翻弄されてしまいました。
今回稽古を通して一番強く感じたのは“内側”の重要性です。“内側”というのは感情、意思、無意識、エネルギー(気)といった外からは見ていてなかなか気づきにくいところだと僕は思っています。
よく身体や声、テクニックといったものに目が行きがちですがそういった“外側”が映えるためにも“内側”が必要になるのだと思います。やはりいくら“外側”が凄くてもそれだけだったら見ていて面白くないし、反対に“内側”だけでも見ていられないし、バランスが大事だと思います。よく「テンションを高くして」と言うと声だけを大きくしたり暴れ回る人がいますが、本当の意味で“内側”を動かしたり大きくしたり操作するのは技術が必要で大変なことです。
お客さんの前で緊張した状態で、その場に合った嘘くさくない適当な感情を表現するのってやっぱり難しいです。そしてその時に感情をより分かりやすくするためには、訓練された声と身体が必要になります。笑う演技をする時にやはり本人が楽しそうでないと見ているお客さんも楽しくならない。当たり前のことだけどついつい忘れてしまうことです。

今回の作品の中で川村さんと二人だけのシーンがあったのですがそのシーン(主に僕)が本番直前までうまくいかず、本当に焦りました。そこで今までを振り返ってみて上手くいかない時は大体自分に集中していない時だと分かりました。例えば身体とか声、台詞の言い方、ダメ出しをもらったところの修正、そういったものに必要以上に囚われていたのです。
そこで開き直ってもっと自分の気持ち、役の気持ちに集中するようにしたところ自分でも分かるほどシーンが改善されました。

こんな当たり前のことに今更気づくなんて、遅いなぁ。

と思いましたが、きっと演劇を始めたばかりの頃は分かっていたのに忘れてしまっていたことだろうと思います。これが初心にかえる、ってことですかね…。

まあ何はともあれ本番も事故無く無事終わり、得ることもあり、新たな出会いもあり本当に得ることの多い客演でした。
この経験を今後に活かしていけたらと思います。

夏休みはありませんでしたが、休まないで良かったなぁ、と思っております。

佐々木 啓

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