稽古場日誌

ワークショップ外部活動 名越 未央 2017/11/18

岡山県赤磐市小学校ワークショップ リポート

超大型台風が日本列島を席巻した10月末、岡山県は赤磐市にて小学校5校全11クラスを廻るワークショップを実施して来ました。
講師は、劇団主宰の安田、演出部の小笠原、そして俳優部の川村とわたくし名越の4人。1クラス60〜90分で、頭と身体をフル回転させながら演劇的に遊ぶワークショップです。
単発でこれだけ短時間の子ども向けワークショップというのは、実は山の手事情社ではあまりやっていません。どうすれば子どもたちがぐっと集中して新鮮な驚きに満ちた時間にできるのか、講師陣で様々なアイデアを出し合い話し合い、いざ岡山へ出陣しました。

さすが、日本で自然災害が最も少ないと県民が誇らしげに語る“晴れの国岡山”、心配した天候は嘘の様に晴れ渡り、ワークショップがスタートしました。
まずは、ペアになってお互いの身体をたたき合うという単純なウォーミングアップから。しかし初めてのことで戸惑う子どもが多いこと!
そういえば学校の準備体操って、やることも順番もだいたい決まってるんですよね。子どもたちはそれが当たり前だと思っている。たしかに規律と効率を考えたら理にかなっているのでしょうが、創造的ではないし第一つまらないと感じてしまいます。学校の中にいるときは気づかなかった、この“つまらない”という感覚を研ぎ澄ますためにも、演劇ワークショップを有効に働かせたいなぁと思うのです。

意外なほど盛り上がるメニューに、「いろんな歩き方で遊ぶ」というものがあります。
歩くだけで遊べるわけがない、と最初は疑わしそうにする子どもたち。矢継ぎ早に出されるお題に沿って様々な歩き方に挑戦するうち、みるみる夢中になっていい顔になってきます。
早歩き、すれ違う人とハイタッチしながら、怒って文句を言いながら、インストラクターを恐ろしい怪獣だと思って怯えながら、おじいさんになりきって、ほふく前進、スローモーション、ふざけた歩き方、ふざけた歩き方をスローモーションで、など。
普段家や学校でやったら怒られる様な、ふざけた動きも、変な顔も、奇声も、ここではやったもん勝ちです。もちろん、どんな動きをすればいいのか戸惑い、すぐには動き出せない児童もたくさんいます。でもそれでいいのです。ちょっと普段とは違う動きをやってみようとする、そういう環境に身を浸してみるということが大切なのだと思います。めちゃくちゃはじける子もいれば、恥ずかしがりながらちょっとだけやってみる子、お題とは全然違う変なことをやり出す子、歩いているだけのはずなのにいろんな姿が散りばめられておもしろい風景が浮かび上がってきます。

多くの児童の一番印象に残った遊びは、「身体で絵を作る」ゲームだったようです。
こちらが出したお題に沿って、5〜6人のチームで相談しながら瞬時に身体で絵を作ります。お題は、「まる」「きょうりゅう」「ももたろう」など様々。
短い時間で、あぁでもないこうでもないと考えて、話し合って、作って、発表する。そうすると、同じお題でもチームごとに違うものが出来上がります。そして他のチームが作ったものを見て、その手もあったか! と驚いたり、これは何をあらわしているんだ? と考えたり、もしかしてアレじゃないか!? と想像したり。
子どもたちがのめり込む様子を見て、このゲームには創造的な身体表現のおもしろさがぎゅぎゅっと詰め込まれているのだなと改めて感じました。

4日間ぶっとおしで11クラスを廻るというちょっとハードなスケジュールでしたが、子どもたちの元気な姿と、懇切にサポートしてくださった岡山の方々や先生方、岡山のおいしいご飯に助けられ、最後まで終えることができました。
私たち講師陣にとっても、新鮮な驚きに満ちた大変貴重な時間となりました。この経験を活かしつつ、山の手事情社はまたさらに演劇を通して日本を元気にするべく邁進していきたいと思います。

名越未央

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