稽古場日誌

テンペスト(2018年) 福冨 はつみ 2018/07/06

私の役目とは

5年ぶりの海外公演。自身としても5年ぶりの海外。
帰国してから時差ボケ回復に時間がかかった。久しぶりだからか、年のせいか……。

さて、今回はルクセンブルクとルーマニアの2か国2都市での公演でした。どちらも初めて訪れる街です。初めて一緒に仕事をさせていただきます。ということはこれまでの経験にはない初めてのこともあるわけです。

特に、ルクセンブルクでは山の手事情社初めての劇場シーズンプログラムでの上演でした。シーズンプログラムでの上演とは、劇場が年間のプログラムをシーズンが始まる前に決め、その劇場から依頼を受けて行なう公演です。これまでの海外公演より主催者からの金銭的な補助もあります。日本で山の手事情社が公演する場合の多くは、劇場を借りて劇団主催で行ないます。劇団が主催なのでお客様に迷惑がかからない範囲で、ギリギリまで様々な変更が可能です。またこれまでの海外公演でも渡航2ヶ月前に決めれば良かったことでした。しかしシーズンプログラムの場合は、シーズンのはじめ(約1年前)におおよそのことを決めなければいけませんでした。さらにこれらが明記された契約書を事前に交わす必要があります。それもこれまでの海外公演と違ってより細かく。

例えば細かいことの一つに「損害賠償保険」についてです。公演中が対象となる損害賠償保険の加入を求められました。日本で加入する保険には渡航中における個人行動の損害賠償保険は付いていますが、公演中は対象外です。色々調べましたが加入できる保険が見当たりません。どうやらルクセンブルクでは個人で損害賠償保険に加入していることが一般的なようなのです。どのような場合でも対象となるそうです。それが分かるまで「無事に契約が結べるだろうか。下手なことは言えないぞ」と、とても悩み、迷い、怯えまくっていました。無事にお互いの国情を理解し治まったのは渡航直前。他にも舞台セットや使用機材リスト、現地スタッフの依頼などが契約書には必要で、十分あったはずの時間があっという間に過ぎていきました。

「より細かく」に怯え、時間は過ぎ、契約書にお互いのサインが入れられたのは公演まで1ヶ月をきったころでした。そこから私たちでの宣伝も開始。それでは届けたい方へも情報を届けることができません。それでも直前に対応していただいた在ルクセンブルク日本大使館からルクセンブルク在住の日本人の方へのメールや劇団員のお知り合いなどもご来場くださり、終演後にはあたたかいお言葉もいただきました。現地のお客様からも「観ることができてよかった」と言っていただきました。でも、本当はもっと多くの方に情報を届け見に来ていただくことが私の役目だったはずです。結果、満員御礼とはいきませんでした。ありがたいことにご覧いただいたお客様からの拍手はとてもあたたかく、劇場スタッフの心意気も熱く、『テンペスト』ルクセンブルク公演を無事に終えることができました。しかし、満員のお客様に見ていただけなかったことはいま振り返っても苦しくてたまりません。自分の役目は何なのか。それを決してぶらすことなく次のステップに進みたいと思います。

日本から応援してくださった皆さま、ツアーの準備に際しご助言くださった皆さま、多くの方に支えられ『テンペスト』ヨーロッパツアーを終えることができました。心より感謝申し上げます。

福冨はつみ

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『テンペスト』ヨーロッパツアー報告会
■日時:2018年8月5日(日)15時~
■会場:大田区民プラザ 展示室
■料金:無料
■予約・問合せ
劇団山の手事情社
予約フォーム
TEL:03-6410-9056
MAIL:info@yamanote-j.org

 

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