稽古場日誌

外部活動 渡辺可奈子 2018/07/25

はじめての きゃくえん

俳優部の渡辺可奈子です。

4月の末、人生で初めての客演を経験致しました。

劇団員になる前に一度お世話になった演出家の工藤大嘉さんに誘われ、「山の手事情社」という肩書を背負っての初めての外部活動でした。
初対面の俳優陣、いつもと違う稽古スタイル、あっちもこっちもよく分からずパニックの連続でしたが、無事幕を下ろすことが出来ました。

今回出演した「ほんとおもろかったです、マジで!」は、大学時代に演劇サークルで切磋琢磨し合った同期8人の5年後と小劇場界を描いたお話です。私たち俳優が身近に感じている“やりたい芝居”と”現在の小劇場界”の価値観の差異や、俳優から見た演劇界に対するストレスが盛り込まれた作品でした。

今回の現場は平均年齢も比較的若く、初めて舞台に立つ俳優もチラホラ。演劇経験がそこまで長くない私が指導するような環境でした。
「声をもっと出した方が……」「ここは身体を開いた方が……」と一丁前に先輩ヅラをしては、人の演技の事ばかりに気が取られておりました。私が今まで学んで来た演劇の理論武装は全く通用せず、言語の違う国に来たような気分でした。

また「演劇界」を題材にしたせいか、観劇された方の意見も賛否両論。かなりヒリヒリするものでした。共感して泣いてしまうお客様もいれば、怒って帰ってしまうお客様もいて、面白かったという意見もあれば、つまらなかったという意見も。
もちろん、作品に対して色々な意見があるのはよくある事ですが、今回はとにかく極端に違ったと言う印象が強く残っています。
観に来た方の職業や、年齢や、性別などによって意見が大きく分かれたのです。お客様が、演劇というものに対してどう思っているのかがよく分かる作品だった様に思えました。

私は他人の意見にとても弱く、優柔不断で人の意見に合わせてしまう節があります。エンジンがかかりづらい私は、初めてのメンバーの中で何ができるのか? 何がしたいのか? と考え始めるまでに少し時間がかかり、やるべき事を見誤っていたようでした。

そんな中で今回大きな課題となったのが「腹を決める」でした。

自分のやりたい演技に対して両足を着けてブレずに挑む。勿論、他人の意見は怖いですが、私自身が納得できない事の方がもっと怖いという事に気がついたのです。
私が役をどう魅せたいのか、どうあるべきなのか。役と向き合い、私なりの解釈で腹を決めて演じるという事の重要性に気が付いた瞬間、みるみるうちに稽古が楽しくなっていった事を特に覚えています。
「私の役はこういう人だ!」と自分勝手に断定する事で、より深く演技を楽しむことが出来きました。

今回初めて客演をして感じたことは、私はまだまだだったなあ、と言う事です。(当たり前ですが……)
意外と出来るようになってる事もありましたが、出来ないことの方が多すぎて、今回は劇団で培った技術がどこまで通用するのか、いい挑戦の場になりました。そして、上は果てしなくある、という希望と期待が高まったような気分です。

これだから芝居は辞められないんだなあ、とつくづく思います。

渡辺可奈子

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