稽古場日誌
methods&過妄女 名越 未央 2019/05/20
子どもの頃、勉強は得意だったが、作文だけは大嫌いだった。
自分の考えていることを他人に知られるなんて恥ずかしすぎる。いったい何のために作文なんてあるんだろう? もしや先生の嫌がらせ? 私が何を感じるかなんて関係ない、正解がわかればそれでいいんじゃないの?
シャイで頑固な私が悶々と考え、自分の言葉で語ることから逃げようとしたその先に演劇があった。他人が用意してくれたセリフなら堂々と言える、そう思ったのだ。
そんなきっかけだったはずなのに、いま私が山の手事情社にいるのは不思議なことだ。
《山の手メソッド》というのは実のところ、ひたすら自分と向き合い、とにかく自分をさらけ出す、私にとっては地獄のような稽古法だったから。
でもこの地獄がクセになっちゃったんだなーきっと。そりゃあキツイ、自分を見せるのは。ところが時々爆発的に面白い瞬間がやってくる。その場にいる一人一人が全然違う人間で、それぞれに人生があって考えがあってそれがぶつかり合うのがめちゃくちゃ面白いんじゃんってことを、ガツンと頭を殴られるみたいに味わう羽目になったのだ。
演劇はたしかに、「ここではないどこかにいる自分じゃない誰か」を演じてみせるものだけれど、それは「ここにいる私」と根底でちゃんと繋がっているからこそ生きてくるのだと気がついた。
《山の手メソッド》では、その「ここにいる私」を徹底的に把握して、ここじゃないどこかってどんな場所? 私じゃない誰かってどんな人? ということを明確にしながら、人間のおもしろさを発見し探求していくのだ。
ちょっと小難しいことを言いましたが、観ている人にとっては全然難しくないんですよ!
つまりは、お客様に生身の人間の魅力を堪能していただきたいのです。
ドキドキさせます、爆笑させます、泣かせるかもしれませんし、ゾッとさせるかもしれません。まるでジェットコースターみたいにお客様を上へ下へ振り回して楽しませます。それが『methods』です。
どうです、怖いもの見たさで観たくなってきたでしょう!?
玄人好みの作品かな、なんて敬遠しないで、どうかワクワクしながら劇場に遊びに来てください。
名越未央
**********
劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ
詳細は こちら をご覧ください。