稽古場日誌
methods&過妄女 倉品 淳子 2019/05/28
一応、私にも若い頃があった。
若い頃は恋愛体質で、一人でいると寂しくて朝方5時ごろに、好きな男性に電話かけたりして、迷惑極まりない女だった。
当たり前だがそんな痛い女に付き合ってくれる男性は少なかった。
私は福岡で有名なちゃんぽん屋さんでバイトしていた。まあ、そういうバイト先でイロコイ沙汰というのは発生することになっている。ある年下の男性と親しくなった。かわいらしいタイプで「プリプリの奥居香ちゃんに似てるね」なんて言われて、ふわっといい気分になっていた。しかし同じバイト先に、モデルみたいにかわいい子がいて、実はその子と付き合っているということが発覚する。
まだ、私たちは付き合う以前だったし、私も怒るって感じじゃなかった。
だのに、誘われて彼の家に泊りに行くようになった。だからといって、特に色っぽいことは起こらなかった、彼女がいるしね。
そのぐらいの時ね。夜中によく酔っぱらって電話したのは。「私は何なの?」とか「どうするつもり?」とかいっぱしに叫んでいた気がする。
ある日、彼は彼女さんと喧嘩したらしく、電話をかけてきて、「彼女とは別れるから付き合ってほしい」と言ってきた。私はなぜかそれはいけないような気がして、断ってしまった。彼女は本当に素敵な子で、二人はお似合いだったから……。
今考えると、彼女という障害がない状態での関係はそんなに面白そうに思えなかった。というのが本音なんじゃないかと思う。病気だね。
チェーホフの『かもめ』に、「なんてみんな神経質なんだ!」という台詞がある。
神経質を辞書で引くと〈情緒的に不安定で、わずかなことにも過敏に反応して自分を病的な状態だと思い込む気質〉だそうだ。これはあれだ。流行りの言葉でいうとメンヘラってやつだね。
つまりこの台詞を若者言葉にしたら「世の中メンヘラばっかりやん!」となる。
まあ、情緒的に安定した恋愛なんて、恋愛って言わないんじゃないかな? 今も昔も人はあまり変わらない。『かもめ』はチェーホフが35歳の時に書いた名作だ。世界で上演され続けている。読めば読むほど面白い。現代に通じるを通り越して、現代劇と言っても過言ではない! 劇場に確かめに来てください。
倉品淳子
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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ
詳細は こちら をご覧ください。