稽古場日誌

methods&過妄女 研修生 2019/06/12

古典文学はタイムマシーン~私が恋した文学の世界~

はじめまして。2019年度山の手事情社研修生となりました、加藤 彩と申します。
これまでは、お茶の水女子大学にて日本文学を専攻しつつ、劇団Яeality(リアリティ)というところでお芝居をしておりました。
そしてこの春、大学と劇団を卒業し、現在に至ります。
ここでは、なぜ私が日本文学を志すようになったかのお話を、自己紹介も兼ねてさせていただきたいと思います。

私は小学生の頃、いつか歴史の教科書に載ることが夢でした。理由は、私が生きていたことをなかったことにしたくなかったからです。
教科書に載っていない人たちも確かに生きていたはずなのに、そこに載ってないというだけでいなかったことにされているような気がして、いつか自分がそんな風になってしまうのがとても嫌でした。
ですが、だんだん、私はたくさんの偉人が載る歴史の教科書を見て、「ここに載っていない人たちは何をしていたんだろう、どんなことを考えて生きていたんだろう」ということが気になるようになりました。

そんなとき私が出会ったのが、古典文学です。
そこには生まれた時代など関係なく、他人とは思えない生き生きとした人物が描かれていました。
特に『更級日記』にふれた時。菅原孝標女が、憧れの『源氏物語』が読みたくて仕方なくてお祈りするところ、手に入れたときの喜び、昼も夜もなく物語を読みふけるさま……。
それはまさに、私が毎日のように学校の図書館に通って本を借りて楽しむときの考えや行動にぴったり重なっていたのです。
昔の人も、私が思うようなことと同じことを感じていたんだ!
本好きだった私は、菅原孝標女にいたく共感して、古典文学の虜になりました。
中高時代には様々に興味が移り変わりましたが、結局文学を学ぼうと大学へ入学したのは、この出会いがあったからこそだと思います。

私が古典文学を魅力的だと思うのは、一瞬にして時を超え、過去でも未来でもない場所で、出会えるはずのない人たちと心通わせることができるからです。
『過妄女』の稽古を見学していると、今と昔が混ざり合って共存しているような、不思議な空間がもわりと生まれます。
過去に書かれた物語の登場人物たちと、現代を生きる俳優たちとの交わりを、ぜひ劇場にてお楽しみください。

加藤 彩

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

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