稽古場日誌

methods&過妄女 栗田 直輝 2019/06/18

恋するメソッド

僕が研修生の頃から付き合ってきた《山の手メソッド》。
その中に《フリーエチュード》という、与えられたルールに則り、シーンを即興でゲーム的に作り上げるものがある。
種類は、あげるとキリがないくらい。
全て山の手事情社の俳優が考え出した稽古方法である。

《フリーエチュード》を行うと、
何が起こるんだろう?
どんな事になってしまうんだろう?
頭の中では言葉や感情が高速で駆け巡る。

《脱出できない空間》という稽古がある。
吹雪の中の山小屋や、一歩外へ出ると表はゾンビで溢れかえっている家の中など、外に出ると危ない場所を設定し、そこから誰かが何か理由をつけて脱出しようとする。それを別の人がこれまた理由をつけて阻止する、というものである。
例えば「(幻聴で)お母さんが呼んでる……」と言って一人飛び出そうとする。
他の人が「あなたのお母さんはもうゾンビになったでしょ!」と止める。飛び出そうとした人は「そうか」と諦め、外へは出ていかない。
この稽古は、ノりにノるとしばらくその設定でやり取りが続く。
続いた時はまるで恋人を手のひらの上で遊ばせるような心地よい気分になる。
逆にノれないと脱出されておしまい。
そんなときは稽古が終わった後も後悔に苛まれる。

山の手事情社の俳優たちは《山の手メソッド》に、破天荒で気分屋の恋人を作ってしまったかのように翻弄される。
とてもタチが悪い。
だがこの翻弄される様がとても面白い。

僕は《山の手メソッド》の紹介という形式の公演に初めて参加する。
果たして僕はこのタチの悪い、しかしとても魅力的な恋人のような《山の手メソッド》を手のひらで遊ばせることができるのか……。

ご来場お待ちしております。

栗田直輝

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『methods』2019年6月21日(金)~24日(月)
『過妄女』2019年6月26日(水)~30日(日)
会場=下北沢 ザ・スズナリ

詳細は こちら をご覧ください。

『methods』&『過妄女』

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