稽古場日誌

桜姫東文章 佐々木 啓 2020/01/10

無茶苦茶な人たち、無茶苦茶な物語

こんにちは。俳優部の佐々木です。
私なりに『桜姫東文章』に登場する中心人物をザックリと説明してみたいと思います。

物語は、
・清玄【高僧】 ・桜姫【吉田家の姫】 ・権助【ゴロツキ(武家の下僕)】
の三人のラブストーリーを中心に展開されます。
これだけ聴くと何だかよくある身分違いの恋や、禁断の恋を描いたロマンティックな作品なのかとお思いになる方が多いかと思います。が、残念ながらそうではありません! 三人共一癖も二癖もある変人です。

まず、清玄。仏門に仕える高僧でありながら、物語の初っ端から稚児・白菊丸と海に身投げをして心中しようとします。しかし実際に死んだのは白菊丸だけ。それから17年後、桜姫を白菊丸の生まれ変わりと思い込み、彼女に恋をして堕落していきます。最終的には開き直って桜姫に肉体関係を堂々と求めます。そして見事なまでに相手にされません。ハッキリ言って無茶苦茶です。

次に桜姫。彼女はもともと左手が開かない障害を持っていました。そのため嫁ぎ先が見つからず、出家しようと清玄のもとを訪れます。そこで清玄と出会ってしまい、彼からストーカーのような行為を受けていくわけです。桜姫もまた清玄に負けず劣らず変っています。ある時(清玄に会うより以前)盗賊に襲われ父と弟を殺され家宝も奪われた挙句、犯されて子供まで産まされたのですが、その時のことを忘れられず、自分を犯した相手の腕に彫ってあった釣鐘の刺青を自分の腕にも彫ります。自分を犯した相手に惚れたわけです。もう、無茶苦茶です。

最後に権助。釣鐘権助と呼ばれる悪党です。腕に釣鐘の刺青があるためです。そう、実は桜姫の父、弟を殺し吉田家の家宝を奪い、桜姫を犯したのはこの権助だったのです。桜姫は暗闇の中で犯されたので、相手の顔を知りません。なので桜姫は権助に再会したとき最初は気づきませんでしたが、腕の刺青を見て彼が自分を犯した相手だと分かると求婚します。(ここも無茶苦茶)権助も承知して二人はめでたく(?)夫婦になります。ちなみにこの権助、すぐ人を殺します。人の弱みに付け込んで金をせびるし、愛していないのか妻の桜姫を女郎屋に送ったりします。この人も本当に無茶苦茶です。

この様に中心人物三人共無茶苦茶なので、作品自体無茶苦茶になるに決まってます。
更に吉田家を乗っ取ろうとする悪者、それに対抗する吉田家の家臣を中心に展開される武士の世界、清玄を取り巻く宗教の世界、権助を取り巻く下々の世界、桜姫を取り巻く女の世界、様々な世界の登場人物たちが作品に登場し物語を展開していきます。
どの登場人物の目線で見るかによって物語の印象も大分変わります。皆さんも舞台上の誰かになったつもりで物語を見てもらえたらと思います。そして無茶苦茶な三人の恋愛模様が最終的にどう決着するのか、是非ともお目に焼き付けに劇場にいらしてくださいませ。見ようによって印象が変わるラストになっています。

もっと説明したいことや人物がいるのですが、長くなるので今回はここまでにしておきます。
それでは劇場でお待ちしております。

佐々木 啓

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劇団山の手事情社 創立35周年記念公演
『桜姫東文章』2020年3月14日(土)~17日(火)
会場=東京芸術劇場 シアターウエスト

詳細は こちら をご覧ください。

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